黒猫?え?この服透けてないっっ!!??
夢丸
第1話 え!?異世界!?
アリシア・ヴァルハラートはその日もいつものように、古ぼけたバックパックを肩に投げ、専門学校の教室に足を踏み入れた。彼女の髪は無造作に一つに結ばれ、地味な色のセーターとジーンズが、誰もが知る彼女の「ブランド」だった。
彼女はゲームデザインのクラスで自信作のプロジェクトを発表しようとしていた。デスクトップの電源を入れると、その指先には異様な震えがあった。
彼女の心臓は、プレゼンのたびに不規則なリズムを刻む。しかし、彼女はいつものようにそれを受け入れていた。
「今日は、皆さんに新しいゲームのコンセプトを紹介します。名前は…」と彼女は言い始めたが、コードが複雑に絡み合う画面上のエラーに気がついた。
彼女は口をパクパクさせたが、突然のシステムのフリーズに言葉を失う。教室の空気が凍りつくようだった。
しかし、そこでアリシアが見せたのは、彼女の本領だった。
失敗を謝ることなく、彼女は笑いを交えて冗談を言い、
「技術にはまだ課題がありますが、これもゲームデザインの一部ですよね」と場を和ませた。
クラスメイトたちはその親しみやすさに笑みを浮かべ、緊張感は一気に解けた。
そしてもう一つ。
アリシアは今時珍しい程とても地味な服装だが、その服の下に隠された彼女の体つきは誰もが釘付けになる程の代物。しかしその事に気付いているのは、ほんの数人のクラスメイトだけだった。
授業後、彼女は自分を奮い立たせながらバイト先である古書店に向かう。
この場所は、アリシアにとっては第二の家のようなものだ。本の間を縫うように動く彼女の身体は、狭い通路でも驚くほど機敏に動く。
書棚の間でアリシアは自分の知識を生かし、時にはアニメキャラクターの真似事をして常連客を楽しませていた。そんな中、彼女の目に一冊の奇妙な古文書が留まる。
その装丁には謎のシンボルが刻まれ、ページをめくるごとに、空気が振動するような感覚があった。
「これは何だろう…」と呟くアリシアが、指でその文字をなぞると、突如としてページから青白い光が溢れ出した。
そして、その光は彼女のスマートフォンと不思議な共鳴を始める。まるで何かが呼びかけるかのように、スマートフォンの画面が点滅し始めた。
アリシアは、好奇心に駆られて画面をタップする。
すると、現実とは思えない光景が広がる。
書店は彩り豊かな光に包まれ、その場にいた筈の客たちの姿は霞の様に消えていく。
「な、何…?」
スマホのアプリが突如ゲームを起動し、ゲームのキャラクターが彼女を手招きする。アリシアは無意識にタップを続け、次第に自身もそのゲームの世界へと吸い込まれていく様だった。現実の物理法則が歪み、彼女は光の渦の中へと飲み込まれていった。
そして、すべてが静かになった時、アリシアの意識は暗闇の中でうずくまっていた。
彼女の新たな物語の始まりを告げる、遠くでの神秘的な声が聞こえてくる。
「光の巫女よ、ようこそガーディアナへ…」
彼女の日常はここで終わりを告げ、新たな冒険が今、静かに幕を開けるのだった。
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