魔術師たちの黎明

「先生の経歴は用意されたものです。私はそのことを隠していました。そして、本当の内容は、魔法省の決定で、生徒に言うことが出来ません。それでも私に、ついてきてくれませんか。絶対に、後悔はさせませんから」

 先生は、クラスのみんなの前で告白した。生徒の捜査通りに、経歴が不透明なことや、魔法省との繋がりについて。

 その受け取り方は千差万別で、様々な反応があったものの、結局は事態を静観していくことになった。でも、悲観的じゃないと思う。根拠は、あまりないけど。一方で私の目のことは、寮内で公然の秘密として扱われている。あんなに隠していたのに、いざバレても、大したことにはなっていない。


 *****


 怪我が治りつつある今日、中間試験の実習から数日後、私達はお待ちかねの中間試験の結果が提示された。

 学校にある数多くの掲示板に学年上位100名の順位が貼りだされる。そこに私達の名前が載っていた。私と、クロエちゃんは誰も居ない穴場の掲示板の前で、二人して勝負の行方を待った。

 結果は......負け。

 隣でクロエちゃんがニコッと笑う。クロエちゃんが相変わらずクラスで一位、私が最下位から二位まであげてぎりぎりで負けた。負けたのは悔しい。でもこうして、クラスで最下位だった私が学年ランキングで提示されたのは大躍進なので、そこは嬉しかった。

 メリナやマリちゃんにも勝ったし。

 それに対して、クロエちゃんはすさまじい。

 上から数えてすぐのところに彼女は居た。一学年1000人の学校で、5番目だった。つまり、この学校の第五席であり、学校のあらゆる特権に手が届く人になった。

 そんな彼女は得意満面で、こんなことを言ってくる。

「コゼット、本気の勝負だったし、勝った私が一つわがまま言っていい?」

「いいけど」

 決闘の内容は絶対、と相場が決まっている。

「でも変なお願いは聞けないからね」

「まあそんなに変じゃないと思う」

 彼女は、私の成績表を取って、チケットのようにひらひらさせて、言った。


「いつかの休日、私とデートして? コゼット」

 突拍子がなくて、耳を疑った。

「デート?」

「そう。二人でお出かけして、寮の外で遊ぶの」

なるほど、デートだ。まあでもそれくらいなら大丈夫。私が頷くと、彼女はにぱっと笑って、決まりねと言った。それから日程を決めて、私達は

 私に背を向けて、遠ざかっていくクロエちゃんに向かって私は叫んだ。

「次は勝つ!! 次は勝つから!!」

「蹴散らすよ、その時も」

 クロエちゃんは大胆不敵に笑う。勝ちたい。彼女に勝ちたい。


 渡り廊下からクロエちゃんが見えなくなって、私は溜息をついて今までのことを振り返る。

 私の魔術師への道は前途多難で、色んなことがあった。クロエちゃんや他の生徒たちに追いつけるように、なんとか頑張りたい。みんなが古典魔術の経験値を10積んでいるのに対し、私は現代魔術の経験値を0から積んでいかなきゃいけない。

 でも、今の自分はそのことを悲観視していない。

 だって、これから成長できるってことだから。


 私は私の夢に向かって、決意を新たにした。その思いに応えるみたいに、胸元のネックレスが、光を受けて明るく輝いた。


【魔術師たちのこと】#1 終わり

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