第7話

 さて、俺は肉を手に入れた。

 火魔法が使えるので焼ける。

 食べれる。

 食べるしかねぇ。


 というわけで、拠点まで肉を持ち帰り焼くことにした。

 ワックワクで火を起こし、いざ肉を焼く。

 フライパンはないので、ワイルドに肉を火にかざす感じで。

 これのいいところは、俺の起こした火だから俺は燃えないので、腕を火に突っ込んでも大丈夫という点だ。

 それでいて、焚き火に当たっていると熱を感じるのだからこの世界は不思議である。


「……焼けた」


 パリッパリにいい感じに焼けた。

 くぅーこれこれ。

 肉である。

 香りもいい。

 ウサギ肉を食べるのは初めてだが、もはや肉であれば何でもいい。


「いただきます!」


 食べる!



 ――味がしなかった。



 いや、しないわけではない。

 肉を食べる感触と、焼けた肉汁は決して美味しくないわけではない。

 だが、それだけだ。

 これまで、数多ある調味料に慣れ親しんだ舌にはだいぶ物足りない物となってしまう。

 異世界に転生した後も、主食が味の濃いソーダゼリーだったのもって、味の薄さを感じずにはいられない。


「……そうだ、ゼリー」


 ソーダゼリーだけに。

 この世界における俺の主食、スライムゼリー。

 傷まない、味が濃い、食べやすい。

 流石に飽きは来てしまうが、おそらく今後もここで生活するなら主食はスライムゼリーになるだろう。


 そこで、俺は前に試したことがある。

 このスライムゼリー、焼いたらどんな味になるんだろう。

 結果、赤色のゼリーになった。

 味は……りんごゼリーに近い。

 なんと不思議な光景か。


 だが、りんごゼリーということはあるものに使える。

 そう、アップルソースだ。

 もちろん完全にソースとして使える訳では無いが。

 ソーダで肉を食べるよりは圧倒的に向いている。


 早速俺は、ゼリーも一緒にやいてみた。

 段々と色が青から赤に変わり、ちょうどいい感じになる。

 そしてパクリ。


「――――うまい!」


 うまい。

 とにかく旨い。

 ゼリーの食感が、硬い肉の食感と相まって絶妙な噛みごたえになる。

 味もりんごの甘味がいい感じに肉汁を引き立てて、これまた絶妙。

 もちろん、前世の美味しい料理たちには比べるべくもないが。

 この世界において、初めて料理を美味しいと感じた瞬間である。

 その日は、スライム布団のシーツが草から皮に変わって、寝心地が更に快適になったのもあって、寝入りは最高だった。


 そして翌日。


「――EXPが50も溜まってる」


 おそらく、料理という新しい経験が大きかったのだろう。

 俺がこの世界に来て、一番EXPが溜まった行動だった。

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