第38話 明日への顔合わせ
とりあえずルアーの操作については、ある程度コツを掴めたように思う。
ついでにそこそこ程度の黒鯛2匹とまあまあ程度のスズキを2匹、釣り上げる事に成功した。
この付近で釣りをする人がいない為、魚がスレていないのだろう。
そうでもなければ2時間で4匹も釣れるとは思わない。
初心者の俺が、自作のいい加減なルアーを使ってなんて。
釣り具と釣果を
時間のおよそ5分くらい前に到着。
魔力を探ると、既にいつもの面談室にいるようだ。
なのでそのまま奥へ。
今回は面談室の中でも大きめの7号室だ。
既に中にはクリスタさん、ミーニャさん、そしてジョンの反応がある。
ノックしようとしたところで中から声が聞こえた。
「エイダンさんですね。どうぞ」
クリスタさんの声。俺の魔力を感知したのだろう。
なので遠慮無く扉を開ける。
「すみません。遅くなりました」
「いえ、早く集まりましたので少し先に始めていました。どうぞおかけになって下さい」
7号室は6人、詰めれば8人くらいは入りそうな長椅子&テーブルという席。
ジョンの横、ミーニャさんの前という場所に座る。
「エイダンさんは既にミーニャさんもジョンさんもご存じですね」
「はい」
「それでは紹介無しで、今回の案件の説明をしましょう。まずは依頼の背景からお話しします……」
クリスタさんの説明は、以前教本で調べた話と、バラモさんから貰った資料に載っていた話、そして此処でジョンと聞いた話があわさったような内容だ。
いつ頃カンディルーが発生して定着したのか、カンディルーの性質はどんなのか、どんな影響があるのか。
そして俺やジョンによる討伐結果、予想される残数、増加を抑えるのに必要な討伐数、他でやっている討伐……
クリスタさんはひととおり話した後。
「以上が本件の背景となります。そして討伐報酬は昨日話した通り、1人2万円プラス討伐数による報酬となります。ここまでの説明には疑問点はないでしょうか?」
俺、ジョン、そしてミーニャさんは頷く。
「それでは次、実施要領です。まずは移動手段から。現地であるダグアル付近まで45kmある事から、行き来はエイダンさんの、人間を収納可能な
「人間が収納可能な
ここではミーニャさん、語尾がそのままなんだな。
そう思ったところでクリスタさんが一度口を開く。
「ええ。人間が可能な
「はい。運ばれる側は全く時間経過を感じませんでした。南門をでて、収納すると言われた直後に目的地についていた。そんな感覚です」
「わかったニャ。ならお願いするニャ」
「それでは明日、8時にこの冒険者ギルド前で待ち合わせて、揃い次第出発でいいでしょうか……」
集合時間、必要な装備、その辺を簡単に話しあった後。
「それではこれで、明日はよろしくお願いします」
クリスタさんがそう締めたところで。
「なら3人で明日の昼食の買い物をしながら少し相談なのニャ。ニャんなら相談しながら一緒に夕食でもどうなのニャ。私はこれで今日の業務は終わりの筈だから、問題無いのニャ」
確かにクリスタさんがいない方が、話しやすい事が幾つかある。
次の次の依頼に関する話とか。
「わかりました。俺は大丈夫です」
とりあえず先にそう返答しておく。
「俺も行きます」
よし、ジョンも問題無いと。
「わかりました。ミーニャの業務終了も了解です。それでは私は失礼します」
あっさりクリスタさん、席を立った。
こちらの思惑に感づいているのか、それとも何か別の仕事に手をつけたいのかは不明だ。
「それでは行くのニャ」
俺達もミーニャさん先導で部屋を出て、そして冒険者ギルドの外へ。
「それでは市場に寄って、そしてエイダンの家に行くニャ」
えっ!?
それじゃ一緒に夕食という意味は、ひょっとして……
「エイダンから
「そこまでわかるんですか」
「この距離なら問題ないのニャ」
うーむ、おそるべし、猫獣人の嗅覚。
「それで明日の分を含めて、買い出すのはコメとオリーブ油、小麦粉の他に何が必要ニャ。いつも世話になっているから、今日の買い物くらいは私が出すニャ」
「オリーブ油は何に使うつもりですか?」
「明日の昼はあのフライなのニャ。ニャら小麦粉とオリーブ油は必要ニャ。そしておかずがそれならパンより御飯の方がいいニャ」
ミーニャさん、一度作った料理は覚えているし、材料も把握しているようだ。
「わかりました。調味料はあるので、あとは一緒に揚げて食べる野菜も買っておきましょう」
「今夜は何にするのニャ」
黒鯛とスズキだと……
明日が揚げ物なら、今日はこんな感じではどうだろうか。
「カルパッチョとバター焼き、アクアパッツアでいいですか」
魚料理ばかりだ。
けれどミーニャさんにとってはその方がいいだろう。
明日の昼が魔魚カンディルーのフライだから、それ以外で。
「お魚天国なのニャ!」
やっぱり。
そう思ったところでジョンがいぶかしげな顔をする。
「失礼ですがミーニャさんとエイダンはどんな関係なんですか。そうとう仲がいいようですけれど」
「2日に1回はお邪魔しているのニャ」
あ、これは誤解されるかもしれない。
ここはしっかり言っておこう。
「家を借りるときに担当して貰ったんだ。ミーニャさんはついこの前まで商業ギルドで研修をしていたから」
「結果、お隣さんになったのニャ。そして夕食になると美味しそうな匂いをさせるので、ついつい寄ってしまうのニャ」
「ひょっとして、俺が行くとお邪魔にならないか」
おっとまずい。ジョンに誤解されている。
ここは何としても誤解を解かなくては。
「単なるお隣さんだ。ただ俺の趣味が魚釣りでさ……」
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