死に戻り傭兵、敵しか魔法が使えない世界で、世界が崩壊するまでの100日間を生き残る。

ねくろん@カクヨム

100日目(1)


「うわああああああ!!!!」

「ひぎぃ!」「ぎゃっ」


<ズシャ! グシャ! ブシャ!>


 俺の目の前で、兵士たちが成すすべもなく死んでいく。

 彼らを率いるべき隊長はもういない。


 彼の首は、乾いた地面に転がっているからだ。

 ピンと伸びたヒゲが印象的な隊長は、冗談みたいな大きさの鎌で首を刈られた。


 秋に麦を狩るように、兵士たちの手足や首が収穫されていく。


<ザッ、ザッ、ザッ!!>


 黙々と前進しながら鎌を振るっているのは人間じゃない。

 骨だ。


 人の骨が歩いて、鎧を着て、武器を振るっている。

 頭がおかしくなりそうだ。


 どう見ても奴らは死んでいる。

 肉も無いし、血も通っていない。


 だが、奴らは生きているように歩き、目の前にいるものを殺す。


 奴らは家畜も人も区別しない。

 貧乏人も金持ちも区別しない。

 兵隊と村人も区別しない。


 ただ列をなして歩き、眼の前のものを刈り取っていく。


「ヒィ、ヒィィィ!!」


 兵士の最後の一人が収穫された。

 大鎌を持った骨は、まだ血の滴る首を腰に下げた網袋に入れる。


 一体どうしてこうなったんだ?


 今日は百日祭。


 本当なら家畜を潰して温かい肉のスープを食って、踊って楽しんで……。

 俺は腕相撲で勝った金で温かい酒を飲む。

 そのはずだった。なのに――


 俺と毎回いい勝負をするカールは、串刺しになって骨に踏み潰された。

 いまはもう地面と区別がつかない。


 毎回料理を作って振る舞ってくれるシュミット家のおばさんは、

 自宅のドアに驚いた顔のまま、縫い付けられている。


「誰か……誰か生きているやつはいないのか?」


 俺はそう叫んで見回すが、村の中は死体だらけだ。

 もう生きているヤツはいないのか?


 燃えさかる村の家々の間をさまよう。

 すると突然、俺は物陰から声をかけられた。


「カロン兄ちゃん!!」


「アリア!!ぶじだったか!」


 荷車とタルの間にいたのは、10歳になる妹のアリアだ。

 よかった……無事だったか!

 それよりも、まだ逃げてなかったのか。


「アリア、今すぐここから逃げるんだ」


「でも、村の人が……カールのお兄さんやシュミットおじさんが」


「もう俺たちの他にはいない。だから逃げるんだ」

「えっ!」


 俺は驚くアリアを抱き上げると、走ってこの場を後にすることにした。

 だが――


<ザッ、ザッ、ザッ>


 骨の戦列が近づきつつある。

 兵士たちが守っていた側からは逃げられない。

 なら、逆に行くしかない。


「アリア、逃げるぞ!」

「う、うん!」


 迫りくる骨の軍隊。

 俺は反対方向に向かって走り出した。





※作者コメント※

ちょうどいい塩梅のダークファンタジーが欲しくて……

でも、自分がほしいのはなかったから……。

ついカッとなってやっちゃったんだぜ★


3万字から6万字くらいの短編の予定です。

ゆるりとやっていくのでよろしくです!

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