第一章 天使の国の女王

第8話 天使の国エンゼル・エンパイア

「ようやく、彼らに会えるのですね…」


 とある王宮で、御伽の夜光団と再び会えるを待ちわびている女王と思われる女性が従者に語りかける。

果たして彼女は一体……



___



 御伽の夜光団は次の目的地であるエンゼル・エンパイアへと向かうため、飛行船を上昇させる。

初めてこの国を訪れるライのために、夜桜は国の説明をする。


「あ、そうだ!確かライはこの国は初めてだったのよね?」

「名前は知っているんですけど、実際来たことはないですね〜。どんなところなんですか?」

「エンゼル・エンパイア。天羽帝國あもうていこくとも呼ばれているわ。天使と妖精が住む天界の国って感じね。心の清らかな人だけが入ることを許されるの。そこの女王様は……

本当に美しい人なのよ。私の憧れの人でもあるわね…!」


 エンゼル・エンパイアの統治者である国の女王は夜桜曰く非常に美しい人物であり、憧れの人と語る彼女の目はきらきらしていた。


「へぇ〜、今からその人に会うんでしたよね!」

「そうよ。無礼な振る舞いは絶対しちゃダメよ!!」



 飛行船はだんだんと雲の上まで上昇していく。

地上から大きく離れていき、やがて辺りは青空だけが広がっていた。

しばらく先へ進むと、雲の上に浮かんでいる国のようなものが見えた。ライは思わず指を指す。


「あれってもしかして…?」

「その通り。奥にあるのがエンゼル・エンパイア。もう少しで到着するから皆待ってて。


…あれ?ローラ、大丈夫か?」


 カヨが横を向くと足がガタガタさせるローラが。顔色も何だか悪いが彼女は強がってる様子でカヨの方を向く。


「だ、大丈夫に決まってるでしょ?アタシは全然余裕よ!!」

「本当か?俺にはビビってるようにしか見えなかったな。さっきも何か怖がって……」

「あ、暁!?…それ以上言わないでよ!!」


 ローラは暁にからかわれ顔を真っ赤にしながら手で顔を隠す。

いつものように賑やかになっていると、ついに目的地のエンゼル・エンパイアに到着する。

飛行船はゆっくりと降下し、その地に着く。


「みんなーっ、着いたよ!さ、早く降りよ!!」


 ミミとロロに引っ張られ、着陸した団員達。

周囲は青空が広がっていて淡い光が国を包んでいる。中心には豪華な装飾の王宮がある。

まずはこの国の女王に会いに行くべく王宮を目指す。


 入り口に入ると、ひらひらと舞う天使の羽と四角いバリアのようなものに囲まれた扉があった。

 ここでこの国に入れるのにふさわしい者かどうかを見極める検出がされている。そこの門番らしき男性が団員達を入念にチェックする。


「こんにちは。あなた達は我が国エンゼル・エンパイアに入る者に相当するか調べさせていただきます」


 門番の男性は指先から小さな光の玉をいくつも出現させ、その光を団員達の体にまとわりつかせる。

光はしばらくするとすっと消えて扉の開く音がした。


「ありがとうございます。入国を許可いたします」


 検査が終わりようやく中へ入ることができた。そこには天使達が優雅に空を飛んでいた。白を基調としたまさに天使の国である。建物やお店を見ているとパステルカラーのコットンキャンディに目を惹かれたミミは嬉しそうに団員達を誘う。


「わ、見て見て!かわいいコットンキャンディ!あれ食べたいな〜」

「やることが終わってからだ。また後でな」

「む〜〜〜」


 ジョージィに連れ戻され不満そうに頬を膨らますミミ。

入口から歩いて二十分後、やっと王宮の目の前まで着く。飛行船の中から見たものとはだいぶ大きいお城だ。


「ここがお城…!」

「今からこの国の女王に挨拶をしに行く。いいな?」

(き、緊張してきた…っ!)


 初めて女王と対面するライは緊張のあまり声が小さくなる。ジョージィが女王の従者と話し合い、許可を得ていよいよ中へ入る。


「女王様がお待ちです」


 従者について行く団員達。そして連れてこられた先には、玉座に座る女王の姿が。


(な、何て綺麗な人なんだ…!)


 女王は青空のようなグラデーションの髪色をしており、白と淡い水色の衣装に身を包んでいる美しい女性であった。

 その美貌に目を奪われるライ。女王は玉座から立ち上がり優しく微笑む。


「ようこそいらっしゃいました。また会えて嬉しいですわ、御伽の夜光団の皆様」


「…ライ!立ちっぱなしじゃいけないぞ」

「え…あ、ごめん…」


 跪く団員達。それを知らないライに跪くようそっと促すカヨ。その様子を見た女王はライに声を掛ける。


「あら、貴方は見たことない人ですね。新しく入ってきたのですか?」

「あ、紹介しますね。こちらライ、新人です」


 いつもはぶっきらぼうなジョージィも彼女の前では敬語を使い礼儀正しい態度になる。


「はじめまして、ライといいます」

「こちらこそはじめまして、ライさん。そう言えばまだ自己紹介をしていませんでしたね。


私はエンゼル・エンパイアの女王であるレーラネール・アンジェラスと申します。レラとお呼びください」


 女王のレラは久しぶりに団員達と会うことができて満足気な表情をしていた。彼女とは以前から深い関わりがあり魔法組織結成当初からずっと団員達の活躍を見守っていたのだ。

そんなレラは今回御伽の夜光団再始動の知らせを聞いてこちらへ来るよう招待状を送っていた。


「色々大変でしたね。一時期どうなるかと思いましたが、今回またこちらへ来ていただき誠に嬉しく思います。新しい団長となった夜桜さん… 招待を受けてくれてありがとうございます」

「そんな…私はただレラ女王様の招待状を受け取っただけですよ。貴方様にまた会うことができて私は心の底から嬉しかったんです…!」


 招待状を受け、再びエンゼル・エンパイアへと足を運ぶ決意をしたのは夜桜だった。彼女は初代の団長の意思を受け継ぎ、二代目の団長として御伽の夜光団を復活させた。そしてレラは団員達に語る。


「それともうひとつ言いたいことがありました。久しぶりの再会ということで晩餐会を開いておりますので、よろしければ来てくださると嬉しいです。まだお時間はありますから、どうぞご考慮くだされ」


 レラが団員達のために晩餐会を開くと話した。従者達総出で開催すると言う。彼女は三人の従者を連れて準備をするように命じた。


「すみません。今夜の晩餐会の料理をこの方達の分用意していただけますでしょうか?私は衣装の用意をしますので…」

「はい、女王様」


 三人の従者達は他の従者とは違った雰囲気であった。彼らは晩餐会に出す料理の準備をするため、王室を退室する。彼らについてカヨがライに教える。


「さっきの三人はレラ女王の従者の中でも特に立場が上であり、女王を守るための戦闘能力もかなり高いんだ」

「そうなの?すごい人達なんだね」

「彼らには後の晩餐会で会うことになるだろう」


 レラとの挨拶を終えて彼女に招待された晩餐会が始まるまでの間王宮の周辺を見て回ることにした団員達。

 まずはこの国の名物であるプリンセスローズティーを皆で味わう。光沢感があり薔薇の浮かぶエンゼル・エンパイアの名物紅茶だ。

プリンセスローズティーを堪能しているとローラがジョージィにあるお願いをする。


「パパ!プリンセスローズティーを飲むアタシの写真撮って!」

「お前ここに来るといつも撮るよな……」


 ジョージィはやれやれとした顔で彼女の写真を撮る。

晩餐会が始まる数時間前、団員達は最高の会になるということをまだ知らない…!

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