じいじの昔話

霞千人(かすみ せんと)

第1話  川に鯨が漂着した話

そうさなあ、あれはじいじが10歳頃のことだった。

山西川の河口近くの南側の砂地にでっかーいクジラが

打ち上げられていたんだよ。頭の先が平らでな。

マッコウクジラというやつだった。

じいじの背丈の何倍も有ってなあ。

川の流れの方に向かって死んでいたんだよ。


何でそうなったのかは分からん。大水が出たときに

間違って川に入り込んで、向きを変えようとして

身体が大きいから、浅瀬に乗り上げて動けなくなって

そのまま干潮になっちゃって、水に戻れずに

死んじゃったのだろうね。


うん、うん、かわいそうだねえ。

それからじいじはちょくちょく見に行ってたんだ。

しばらくしたらなんか匂うようになってなあ。

うん、腐って来たんだね。


そうしたら立入禁止になってなあ

腐ってばい菌が増えてじいじ達が病気になったら

いけないから、近寄っちゃダメだってことだったよ。


大分たってから立入禁止が解けてな。

じいじはまたクジラを見に行ったんだよ。


そしたら、骨だけになっていたんだ。

じいじはその骨の中に入って遊んだよ。

なんか冒険している気になってたなあ。

まあ、クジラの骨の中に入って遊ぶなんて

滅多に出来るもんじゃないからなあ。

クジラに食べられたらこの辺に居るのかなあって

想像したりしてなあ。


それからしばらくしたらクジラの骨は消えていたんだ。

何でもどこかの博物館に引取られていったそうな。

もしかしたら

今でもまだその骨が残っていて、見学者の子供たちが

その骨の中で「おっきいなあ!」

と、驚いているかも知れないなあ。


じいじの子共の頃の自慢話じゃよ、ほっほっほ。


終了

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