無気力エルフの鬱々

@MimiKKY001

第1話 無気力エルフは勘当された


 私はエルフの里の長の娘。

この里でこの歳になるまでだらけて何もしないで呆けていた無気力エルフ。

お父さん里長には働けと言われるけれど、やる気も起きず毎回後送りにしたりしている。

その理由は魔導を極めているから…というのもあるし、ただ単に面倒くさいからというのもある。

 今日も「働きなさい。」って言われたから、「村の外に出てってもいいなら。」と条件を付けてやった。

私は自慢では無いが、お父さん里長からは大切に育てられたと思っている。

なんたってオモイビトお母さんから授かったお母さんの命の代わりなのだから。|(お母さんは私を産む時に出産してすぐに亡くなった。)そんな大事な命をそんな粗末に…

「君を信じていたが、失望したよ。この体たらく。私は君に何度も注意喚起をしていたが…。もう私は君を養ってられるほど心のスキマはない。この里から出ていってもらおう。」

…追い出された。

私は自慢では無いが自炊が出来ない。

それに、追加で外の世界里以外を知らずに育って来た。

つまり私が外に出る里を出るということは即ち、死を表すのだ。

…まあ、自炊はなんとかしたら出来るだろう。

家は…空き小屋を探せばあるだろう。

水は…自炊をする前の食べ物は……おやつは………。おやつは諦めよう。

砂糖の作り方すら分からない私が甘いものを食べることなんてできないだろうし、出来ないことをやろうなんて活力、私には残ってない。

残ってたらこんな体たらくになっているわけがない。

 さて、どうしようか。

…確かこの方角から北に向かって道があってその道を歩くと人里があったという話を聞いたことがあった……気がする。

まずはそこに向かおうか。

私は歩き出した。

外の世界は新鮮だった。歩けば風が心地よい。

確かに里でも風を感じることはあったが、あれはただの風だ。こちらの方が風情がある…気がする。そんなことより、…疲れて来た。もう何年ぶりにこんなに歩いただろうか。しかし私は後ろを振り返って驚いた。

まだ里の門のしかも門番の顔をこの目でしっかりと捉えられる距離だったことに。私は元々こんなに動けない訳じゃなかったが、…長い間200年家に篭っていればこうなるか。

私は自問自答をして答えを挫折して、自分の中で納得した。

 結局手を伸ばしたところで手の届く範囲のものしか届かないし、ましてや手の届くギリギリのものは守れない。

他者に奪われてしまうだけだ。

私はそんな無駄なことには目を背けて私の本当に大切なものだけを守って来た。

そんな私からすれば、動けないなんてことは造作もないことだ。

こういう時非常事態のために私が魔導を極めていたのだ。

私は魔導書グリモワールを取り出して魔法を使う。

身体強化フィジカルブースト。|(フィジカルブーストとは通常のヒトの身体能力を約3倍にする魔法である。術中は相当な集中力と魔力を消費する。また、術を発現する時間は術者の技量と魔力量により作用され、術を解除するのは、魔力が切れるか魔術を途中で中断することで解除ができる。)」

私は体が軽くなる感覚を実感し、村までの道を駆け抜けた。

「風が気持ちいい。」

私は風を切って走る。体力も3倍になっているのでさっきよりも全然疲れない。

私は全速力で駆け抜けた。

…疲れた。後ろを見た。まだ門が薄らだが見える。これではダメだと思い、考えを加速させる。まず、私の身体能力について式を立てる。

普通の人 1×3=3

私    0.1×3=0.3

こういうことだろう、つまり私の基礎の身体能力が終わっているということだ。

ということは私が30倍の身体能力になれば問題ないということ。

私は魔導書を取り出す。

そしてこう唱える。

身体精神強靱化フィジカルギフテッド。|(フィジカルギフテッド。フィジカルブーストの上位互換で、身体能力の強化の他に、精神強化、肉体の強靱化などがあり、これを行使するためには凄まじい集中力と膨大な魔力を使います。この魔法は一度使うと集中力が無くなるまで、または気を失うまで続きます。身体能力の30倍の程度の強化が見込めます。)」

気分がハイになっているのがわかる。

この魔法の副作用だ|(違います。仕様です。)

それに、さっきまでの鬱々とした感情も綺麗さっぱり無くなっている。

そしていつもの30倍は凄まじいな。

もう後ろを振り返っても、門は見えない。

これで本当のお別れだ。私は前に進む。人里を目指して私は風を切りながら移動した。

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