第一章:快適な拠点作り~意外な客人?~

 父の言葉にあれ程騒いでいたピクシー達が静まった。異様な静けさに母は戸惑い気味に辺りを見回し、姉と兄は何時でも戦闘を開始できるように体制を整えている。


「フム……ソノトイハ マチガッテイルナ。ダガタダシイ」


 ピクシーの答えは要領を得ない。間違っているのに正しい?


「ワレワレハ、ダンジョンデ ウマレタピクシーデハナイ。ワレワレハ、ソトカラヤッテキタ。

ダカラ、ダンジョンノイシニ シタガウ リユウハナイ」


 ピクシーの言葉に首を傾げる。外からやってきた?

 モンスターは例外なくこのダンジョンから生まれ、入ってきた人間に殺意を抱き、襲ってくる。それが全世界共通の認識だった筈だ。


「外、と言うとこのダンジョンの外? 外にモンスターが居るなんて聞いたことがない」


「ココニクルマエニ スンデイタトコロガ オソワレテ キガツイタラココニイタ。

 カエル ホウホウガ ワカラナイ。

 ハジメカライタヤツラハ ハナシガツウジナイ。ニンゲンヲ コロスコトシカ アタマニナイ。

 ダカラ ワレワレハ ココニスムコトニシタ」


 ピクシーがここに来た理由を語る。ここに来る前? 気がついたら?


 理解の範疇を超える話に思わず唸る。こう言う厄介そうな話は出来れば巻き込まれたくない。


「ココニハ ニンゲンモ ヤツラモコナカッタ。コイツガハジメテダ」


 そう言ってピクシーは俺を指差す。え!?


 厄介事は勘弁と半場空気になっていた俺に照準が向けられ思わずびくつく。俺にくっついていたピクシーはそれに気づいてクスクスと笑い出す。


「イママデ、ズットダレモコナカッタ。ソレナノニ、コイツハキタ。ダカラヨウスヲウカガッテイタ。

 ハナシヲデキルアイテカドウカ、シラベルタメニ」


 ピクシーの言葉に父は「成程」と呟いた。そうして喋っているピクシーをまっすぐ見つめ「それで今回、話を掛けに来たのか」と問いかける。


「イヤ、ワレワレハマダキメカネテイタ」


 父の言葉に首を振るピクシー。え、決めかねていたって話しかけてきたのはピクシー達の方だよな?

 俺たちの疑問に気づいているだろうピクシーは何やらもじもじとし始めたが、暫くして観念したかのように口を開く。


「……オマエタチノ、タベテイルモノガ オイシソウデ」


 気まずげに呟かれた言葉に固まった。

 飯に釣られただけかよ!!!


 思わずコケる俺たちに少し怒ったような表情をしたピクシーは「シカタナイダロウ! ワレワレハココニキテカラ ナニモタベテナカッタンダ!」と叫んでいる。


「あらあら、そんなに長い間食べてなかったの? ごめんなさいねぇ、もうこれだけしかないのよ」


 話を聞いているのか分からなかった母が反応を示す。ピクシーはその言葉に「アリガトウ……」と照れながら食べ物を受け取る。


「どうしようかしら、本当ならもっとご馳走してあげたいんだけどここじゃ食材も道具もないし……」


 母はもう完全にピクシー達に料理をごちそうする気満々だ。どうしようかしらと小首を傾げ「せめてセーフエリアに行けばご飯をご馳走できるんだけど」と呟いた。


「イクゾ!!」


 母の言葉にピクシーが叫ぶ。それに同調するように他のピクシー達も騒ぎ出し慌ただしく飛び回っている。え、ていうか行くって、行くってどういうこと?


「ワレワレモ、オマエタチトトモニイク!」


 俺が必死に理解することを拒んでいたが、そうはさせまいとピクシーが高々と宣言した。


 ……待って、それって非常にまずいんだが!?

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