第一章:快適な拠点作り~崖下の美しい景色は~

 俺が最初に来たときは夜も遅い時間だったから、太陽の代わりに月が登っていたし、その所為も相まって淡く光るピクシーが幻想的だったが。


 朝日に照らされるピクシーと花畑もなかなか美しいものだった。


「やっぱ奇麗だなぁ」


 ダンジョンの中だからこそ見れる景色に見惚れていると上から賑やかな声が聞こえてきた。


「ちょっと! 流石に深すぎるでしょこれ!! あいつ本当に無事なの!?」


「落ち着けって、何度も来てるって言ってたし、あいつも探索者だろう? 大丈夫だろう」


「お父さん、大丈夫? 私最近少し太ったから重くないかしら?」


「ははは、母さんはもう少し太ってもいいくらいだ。大丈夫、お父さんに任せなさい」


 三者三様の声に思わず笑みを零す。姉は何だかんだで家族思いだし、兄は俺のことを信頼してくれている。父さんと母さんは相変わらず仲睦まじいし、俺はこの家族の一員として生まれてきてよかったな、なんて思った。


 恥ずかしいから、絶対に言わないけど。


 頭上の賑やかな声に惹かれて来たのか、ピクシーの数人がこちらに近づいてきた。


 ここ以外のピクシーは人間をみると途端に襲ってくるが、ここのピクシーはちょっと毛並みが違う。


 悪戯はしてくるが、なんというか……人を怒らせて楽しむタイプ? こちらが殺す気で手を出さなければ向こうもある程度許容してくれる感じだ。


 一度悪戯されて少し仕返しをしたが、クスクス笑って逃げるだけだったし。多分当たってるだろう。


 あの時もし殺す気で攻撃していたら……多分ここに骨を埋めていたかもしれないけど。


 それから少しして、4人が無事到着した。姉は地面に足を付けた途端「あんたなんて所に来てるわけ!?」と怒鳴ってきたが。その剣幕に近寄ってきていたピクシーが散らばったのに思わず笑ってしまった。


「麗華、落ち着けって。見てみろよ、すごい光景だぞ」


 俺に詰め寄る姉に兄が声を掛ける。恨めし気な目で兄を見ようとした姉は、その光景に険が取れる。


「凄い……」


 目を見開いて、この光景を目に焼き付けるようにじっと見つめる姉に、俺も初めはそうだったな、なんて笑みを零す。


 母や父、兄もこの光景に感動してくれているからここに連れてきて正解だったようだ。


 この光景は確かに、独り占めしたいとも思うが同時に大切な人と一緒に見たいとも思う、そんな光景だ。


 今度は夜になった時に連れてきたいな、なんて思いながら俺も少しの間、皆と一緒にこの景色を楽しんだ。

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