魔法少女、龍と共に踊る

トモが走っていく先には、木々がなぎ倒される音、そして熱波を感じた。

どうやらもう戦いは始まっている。トモが走り始めてすでに30分ほど経っていた。


トモが目標地点を見据えるとその先は赤々と燃えている。

どうやら激戦といった様子だった。

近づくと熱波がしっぽをちりちりと焼いた。

そこまで近づくと、二人の戦う人影が見えてきた。


一人はメテオラ、もう一人は件の化け物と化した木こりだろう。

両目はえぐられており、対峙するメテオラを視線に捉えていない。

しかしむちゃくちゃに振り回されている背中から生える6対12本の触手が、メテオラを寄せ付けることはなかった。


火を使ったのはメテオラの様だ。攻めあぐねた結果、遠距離から削ろうとしているようだ。触手の攻撃を腕や足で防ぎ、口から火を吐いて応戦している。

しかし、単純に12本の触手と手足では、手数が足りていないようだった

叩き落としきれない触手が、メテオラを襲う。

直撃すると、確信しメテオラは身がまえた。その時だった。


大剣を掲げたトモが触手とのあいだに入り、一凪して切り落とす。

切り落とした触手はびくびくと、のたうち回りやがて動かなくなった。

いままでに感じた事のない痛みだったのだろう。木こりの本体は絶叫を上げる。

だがそこには知性が感じられず、おおよそ人だったとは思えない異形と化していた。


「なんじゃトモ? 来てくれたのか?」


「一応初めてこの世界で仲良くなれた友達だしね」


トモはそういうと、高速で木こりに切り込む。

触手はトモの接近を予期していたのか、退路を塞ぐように後ろから迫っていた。

しかし、その行動は阻害される。メテオラが触手に爪をめり込ませ阻止したのだ。

トモはそのまま大剣を横薙ぎに振ると、腰の辺りで木こりの胴は真っ二つになる。

そこには、明らかに異質な黒い巨大な種のようなものが下半身に埋まっていた。

どうやらそこを中心に化け物は再生を始めている。

それを見てトモは、


「うわ……、気持ち悪い、でも取らなきゃ……」


そういっていやいやその種を取り出した。

血に塗れたその種は脈打ち大変にグロテスクだ。

トモはあまり見ない様にして位相区間に急いで隔離したのだった。


その作業が終わると後ろから声が掛けられる。メテオラだった。


「やるのう。一撃で真っ二つとは」


その表情は言葉とは裏腹にさして意外でもなさそうな顔だった。


「あの種みたいなの見た?」


「あぁ、なんじゃあれ?」


「私もわかんない」


「なんじゃお主もしらんのか……」


そんな会話をしていると、周りの消火を終えたドライアドが口を開く。


「お二人とも今回は大変助かりました。 一応その種のようなものですが、空から落ちてきた段階ではそれほど大きくはなかったと記憶しています」


「ほう? 成長しているという事かもしれんな……。まずは回収できてよかったといったところかの?」


「まぁ……ね? とりあえずもう出てこないことを祈るよ」


二人はそういうと、右手だけでハイタッチを交わす。

初めての共闘にしては、まずまずいいチームワークを発揮したようだった。

そのことに二人は笑みがこぼれた。


その後、ドライアドは森お困りの際はお呼びくださいと言って去っていた。

去り際に頭の枝を手折ると、トモに差し出す。どうやら、高値で取引されるそうだ。

トモは図らずとも路銀の確保が出来たことに感謝し、森を後にするのであった。

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