第7話 性欲爆発!


 ――という訳で僕達は宿に使う部屋まで案内され、ライラは部屋のドアを開けた。


「ここだよ。まあ私の部屋なんだけど。師匠にはちょっと狭いかもね」

 そこはキレイに整頓されてある部屋で、女の子が住んでいると言われれば納得するような内装だった。二人部屋なのかベッドが二つあった。


「へーいい部屋じゃないか」


 僕が感想を漏らすとライラは気を利かせてくれた。


「……えーっと師匠も部屋で寝るの?それとも外?」

「僕が寝る場所は基本的に岩の下とか枯れ木の下とか、とにかく暗くてひんやりしていればいいんだ。そうだ、ベッドの下とか丁度いいかも!」


 ――シュルシュル。


 僕は早速片方のベッドの下に滑り込むように入っていった。……とその時。


「じゃ、アル。こっち座って」

 とライラがアルを呼ぶ声がした。

 僕は少し離れた隣のベッドからちょっと顔を出し二人を覗き見ると――そこにはドキドキするような光景が展開されようとしていた!


「は、はい。何でしょうか?ライラさん――きゃっ!」

 ライラはアルをベッドに押し倒し、まるで捕食者のようにアルを見下ろす。

「実は私、すっと我慢してたんだ。アル、いいよね?」

「は……あ、あの……」


 アルはライラに両腕を頭の上で固定され逃げられない、というか逃げようとしている風に見えない。


 僕は蛇のくせになんかドキドキしてきた、いや肉体は蛇だが魂は人間だしこれで正常だ。うん。きっとそうだ、美少女同士のアレコレなんて人間の男なら興奮して当然だよね!

 ――というわけで横から物音を立てず二人の行為を見守るのである。


 ライラはちょっと怯えるアルを見つめて言う。

「私さ、見ての通り女の子が好きなんだけど――」

「は、はい……」

「女として女が好きなんじゃなくて、どっちかっていうと男として女が好きなんだ。この意味わかる?」


 ふむ、分かるぞ~。やっぱりライラは男の目線でアルを見ていたのだ。……とくればあ〜!


「ど、どう違うんですかぁ……」


 少し涙目になって怯えるアル。よし、ライラ!そのまま上から行くんだ!行け!ゴー!

 僕はもうなんか興奮してドキドキが止まらなくなってきた……。


「ふふ、君のが欲しいってコト」


 ライラは微笑むと自身の左手をアルの頭の後ろに回して少し持ち上げ、自分の唇をアルの唇にかぶせた。


「!……!?……!!」


 喋れないアルは体をビクビクと仰け反らせる事でライラの口付けに答えた。……。ああ、すばらしい。そして、尊い……!


 さらにライラの右手がアルのお腹の辺りにのびて、服の下からアルの豊満な胸に到達する。


「ふぁっ!……んっ……んっ」


 アルはまた思い切りよがっている。すんごい気持ちよさそう……。なんか羨ましい……。


 ライラの攻めはまだ続く。

「力抜いて、痛くしないから……」


「やっ!ラ、ライラさんソコはさすがにダメッ!あっ、あっ」


 う、うわあああああああああああ!


 僕はもう目の前の光景を眺めるだけでは満足出来ず、思わず大口を開けてしまった。そしてその勢いのまま二人とも仲良く丸呑みにした。


「わあっ!し、師匠!?」

「ヌメタローさん?ど、どうしたんですか!?」


 どうしたも何も理性が吹っ飛んだのだ。君達のせいでな!あああああペロペロペロペロ――。



 ――。


 事が終わって二人を吐き出す。

 案の定二人共恍惚とした表情で僕に寄りかかる。


「あー、ヌメタローさんの『のみこむ』はなんでこんなに気持ち良いんでしょうか?」

「フー……ホントだよね。こんなスキル師匠以外絶対持ってないよ」


 アルとライラはうっとり虚空を見つめてつぶやいた。

 僕の回復粘液は速乾性で10秒も経てば完全に乾いてしまいベタついたりはしない。あとに残るのは爽やかさだけ。この辺も僕がいい塩梅に調節したのだ!


 僕もそんな二人を見ていると満足感で満たされてゆく。



 ――てあげて下さい――。



 ……うっ!またあの誰かの言葉だ……。時折、思い出したように僕の頭の中に再生されるこの言葉は何なんだろう?僕が人間だった頃の記憶の一部だと思うけど、やはり思い出すことは出来ない。誰の言葉だろうか?




 そんなやりとりをしていたら僕らはその日の夜を迎えた。あたりは真っ暗だ。

 僕らは盗人対策にちょっとした仕掛けを作った。

 まず修道院を取り囲むように細い杭を打ち、それらを縄で結んである。縄には木の板が通されていて盗賊が足を引っ掛けたとき、その木の板がカランカランと音を立てるという仕組みだ。


「ちょ、ちょっと緊張……してきました……」

 アルは実戦経験がほとんどないのもあって緊張で体が硬くなっているようだ。


「アル、魔法のコツを教えてあげるよ!」


 そんなアルを見かねてライラが笑顔で助言しようとしている。ん?君魔法は専門外では?

「は、はい……」


「それは魔法を打つ事。私じゃなくてね!」


 アルは一瞬ポカンとし、ちょっと吹き出して笑った。

「ぷっ……あははは、だ、大丈夫ですよぉもーライラさん……次は失敗しませんから!」

 ライラもニッコリと微笑みうなずく。

 いいなあこういう関係。僕はニヤニヤしながら二人を眺めていた。


 ちなみに僕らは夜活動しやすいように夕方から少し寝ておいたのでアルもライラも眠気はないようだ。もちろん僕もね。


「さーて、今夜は盗人は出てくるかな?ライラ、泥棒ってどんな奴?君は今まで戦った事ある?」

「一回あるけどチンピラに毛が生えたぐらいだったかな。私が一発入れたら逃げていったしね」

「相手は一人だったのかい?魔術師ではなかった?」

「うん!一人だったよ。魔術師は私の見てる限りじゃいなかった」

「過去何回襲撃されたの?」

「5回。結構しつこいよね」


 僕はこれらの情報を分析した結果一つの結論が出た。


「ねえライラ、そいつは何で執拗にここの魔術書を狙うと思う?」

 ライラはちょっと考えて言った。

「んー、そりゃあ聖魔法は強力で効率のいい優れた魔法だしその魔術書だってレアだから欲しがる奴は多いんじゃない?」


「たしかに、だけどそれだけで何回も盗みに入ろうとするかな?しかも一人だけで……」

「……というと?」

「もしかしたらそいつらのバックに誰かがいるかも知れない。襲撃の実行犯は安い金で雇われたその辺の輩――という気がするんだよね」

「へーもしかして師匠、犯人の目星付いてたりする?」

 僕は少し首の角度を上げ、予想する犯罪集団の名をあげた。



「僕もあんまり詳しくないけど、やっぱりイグドール教団かなー?」



 と、ここでアルが話に入ってきた。


「イ、イグドール教団って私も魔法学校にいた頃聞かされました!なんでも邪神崇拝の組織だから勧誘されても絶対に入らないようにって……」


 僕は安心したように微笑んで答える。

「アル、その通り!奴らには近づいたらダメ――」


 カランカラン!!


 その時、例の罠の音がした。建物の裏手だ!


「ライラ!アル!裏手だ。行ってくれ。僕はこっちを見ておく!」

「了解!行くよアル」

「は、はい……」


 裏手に駆け寄っていく二人を見送って考えてみる……。

 あんな初歩的な罠にかかるような相手ならアルとライラで十分だろう。

 むしろそいつを囮にして別の方角から侵入してくる敵のほうが面倒だと思わないかい?


「ねえ、そこの君。今日は二人なんだ?」


 正面に立つ黒いローブの人物にそう語りかけると、僕は火の魔法を発動させた。


 ポウッ……。


 その人の頭程度の大きさの火球は周囲を照らし、黒いローブを着た人物を照らし出す!

 僕はとりあえず直接聞いてみることにした。


「やあやあ、どちらさんかな?」


「なっ……だ、誰!?……え?蛇!?」


 お約束の反応である。これは声からして女だな。


「一応聞くけど君どう見ても泥棒だよね?悪いけど捕まえるよ」

「……ふん」


 ローブの女はその額あたりから青い光を漏らしだした!水魔法の色だ。

 これは火球を消すつもりかな?

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