間章Ⅱ

羽ばたけ。羽ばたけ。自由の空へ、羽ばたけ。

 肆拾畳ぐらいの畳敷きの広い檻に閉じ込められていた。

 けれど世話係が付きっ切りで面倒を見てくれて、時に愉快なフクロウが遊んでくれる以上、何一つ不自由のない生活を送った。


 勉強は大の嫌いだ。何せ一日勉強させられたのに、夢の中でも勉強しなければいけないという地獄。しかも夢の方がよっぽど専門的で難しいものも多い。朝の授業時間なら隠れて教師を困らせることはできても、夢の授業は一度たりともサボることは許されなかった。

 

 ある時は勉学。ある時は世話係とじゃれ合い。ある時はフクロウの面白おかしな物語を聞く。時にあっとさせられるところも、少々ヤンチャなところもご愛嬌だが真っ直ぐに成長した。

 贅沢過ぎず、そこそこと快適な暮らし。一切の外出禁止されたのが唯一の不満ではあるが、それでも文句はなかった――烙印されたその日までは。


 許さない。

 右肩甲骨辺りを押さえながら奥歯を嚙み締める。唐突に外出許可が下りたと思いきや、まさか拷問のような時間が続くとは。

 こんなの許していいはずがない――自分の存在を疑うようになり、一番の友達のフクロウとも大喧嘩したのはそれから時間も掛からなかった。


 要らないからこんなところに捨てられた。忌み子だからこんな奥深くに隠されたのだきっと。

 そう一度疑い出すと思考は負の螺旋を繰り返し続けていた。そんなある日、不貞腐れた鳥にフクロウは提案した。


「試しにここから出て行ったらどうじゃ?」


 自ら檻を出て行くなんて発想は、一度も思い浮かぶどころか想像したこともなかった。沢山の本を読んでも、物語を聞かせられても、だ。

 だから鳥は魅力的な提案に乗って、檻の外へ一歩踏み出すことに決意した。それが更なる地獄へと繋ぐことも知らずに。

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