彼は誰時に灰は舞う

大鷹 涼太

プロローグ

 小金井こがねいかなめは孤児である。

 産まれて間もない頃に捨てられたらしく、物心ついた頃には施設にいた。


児童養護施設・銀杏館いちょうかん――


 それが要の育った場所の名前だ。

 町のはずれにひっそりと建っていた古民家を改装し、児童館も併設されたそこは、地域から『ぎんなんの家』と愛称を付けられ、親しまれている。

 年に一度行われる『銀杏館のぎんなん落とし』と言えば、地域ではちょっとしたお祭りになるほどだ。

 ぎんなん落としの後は、臭いがしばらく施設内を漂うのは玉にきずだったものの、あの賑やかさはいつまでも忘れないだろう――

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