おんせんめぐり

梅竹松

第1話 幼馴染みに誘われて

「ずっとキミのことが好きでした。僕と付き合ってください!!」


四月七日。都内のとある高校。十五歳の少年・柴田修也(しばたしゅうや)は、高校の入学式が終わってすぐに体育館裏、満開の桜の樹の下で人生初の告白をした。三月三十日生まれの牡羊座。少しくせ毛の黒髪に平均的な身長で中性的な顔立ちをしており、体格がよいわけでもものすごいイケメンというわけでもない。だが、それでも修也は勇気を振り絞って告白したのだった。


相手は小学生の頃から片想いしていた同い年の女の子だ。身長百四十センチほどと高校生としてはかなり低い背丈に簡単に折れてしまいそうなくらい華奢な身体。髪は腰まで伸びたストレートヘアで、実年齢よりも幼く見える顔立ち。そして、そんな外見とはアンバランスなほど豊かな二つの胸の膨らみ。性格は明るくて人懐っこくて、ちょっとやそっとでは決してめげない根性の持ち主でもある。


そんな可愛く頑張り屋な彼女に修也は惹かれたのだ。

最初はただ遠くから見ているだけで満足だったが、次第にもっと親密になりたいと考えるようになっていた。しかし、なかなか告白する勇気が出ず、勉強や部活で毎日忙しいということもあって、結局気持ちは伝えられないままだった。


だから、高校生になったら変わろうと思っていた。ただ見ているだけでは欲しいものは手に入らない。勇気を出して行動しなければ、日常は変化しないままなのだ。


そんな抱負を胸に修也は今日高校生になり、入学式の後、ずっと好きだった女の子を体育館裏に呼び出して告白した。

心臓が今にも破裂しそうなくらいバクバクと脈打っているのを意識しながら、目の前の少女を見つめる。


少女は非常に困惑した表情で視線を泳がせていた。まさか入学式の直後に呼び出されて告白されるとは思っていなかっただろう。小学生の頃から知っている男子とはいえ、うろたえてしまうのも無理はない。


この沈黙が修也にとってはとても恐ろしいものだった。もしもダメだったらしばらく立ち直れないかもしれない。突然告白をして相手を困らせてしまっていることに少なからず罪悪感を覚えてもいる。できることならこのまま返事を聞かずに逃げ出してしまいたい。

だけど修也は、返事を聞くまでこの場を動かないと決めていた。ここで逃げ出したら中学までの自分と変わらないからだ。九年間の義務教育を終え大人としての新生活が始まった今、もう子ども時代の自分に戻るわけにはいかない。告白して相手の返事を聞くという当初の目的は絶対に果たすつもりだった。

告白の返事が『よろしくお願いします』ならあまりの嬉しさに舞い上がってしまうだろうし、『ごめんなさい』ならこれ以上ないくらい落ち込むだろう。『保留』の可能性もあるが、それならそれで構わない。相手に自分の気持ちを伝えることが一番重要なのだから。


果たして少女の返事は――


「…………私で良ければよろしくお願いします」

「………………え? 本当に?」


少女が本気で悩んだ末に出した答えを、修也はすぐには理解できなかった。

だが次第に、告白に成功したという事実が明瞭になってゆく。

聞き違いではないかと思って少女を見るが、彼女は恥ずかしそうにしながらも満面の笑みを修也に向けていた。どうやら本当に告白に成功したらしい。


「やった……やったぞ!!」


生まれて初めて彼女をゲットし、飛び上がってしまいそうなほどの喜びを全身で表す修也。勇気を出して気持ちを伝えて良かったと心から思うのだった。


「もう……大げさだよ」


今にも踊り出しそうな彼氏を微笑ましそうに見守る修也の彼女。

そんな二人を祝福するかのように、桜の花びらがひらひらと風に舞っていた。

こうして入学式直後の体育館裏にて、一組のカップルが誕生したのだった。


そのカップル誕生の瞬間を偶然目撃し、あわあわと取り乱している女子生徒がいた。

名前は阿佐野海愛(あさのみあ)。修也と同じくこの春この高校に入学した新入生だ。十二月二十七日生まれの山羊座。身長は百五十センチほどと小柄で、どちらかといえば痩せている方だ。可愛らしい顔つきに潤んだ瞳、そして瑞々しい唇。ショートカットの黒髪で、ピンクのヘアピンをつけている。至って平凡な女の子だ。


海愛は、入学式が終わったあと教室に戻る前に少しだけ学校の敷地を見て回ろうと思い立ち、何気なく向かった体育館裏で告白の現場を目撃してしまったのだ。


悪いとは思いつつも目が離せずに隠れて見ていたら、カップルが誕生してしまった。

それは海愛にとって今日一番の衝撃的出来事だったため、ついさっきまで抱いていた高校生活への期待とか不安といった新入生らしい感情は完全に忘れてしまっていた。


――すごい……あの女の子。男子に告白されてOK出しちゃったよ……私だったら頭が真っ白になって返事どころじゃなくなるよね……


女子生徒に対して畏敬の念を抱く海愛。

海愛だって年頃の女の子なので優しくてかっこいい彼氏が欲しいと思わないこともないのだが、いかんせん海愛は極度の人見知りだった。特に男子とはまともに会話することもままならない。彼氏どころか男子の友達を作ることも難しいだろう。

……もっとも、女子なら誰とでも仲良くなれるというわけでもないのだが。

男子相手だろうが女子相手だろうが、人付き合いは苦手なのだ。


だからこそ海愛は、その場でしっかりと告白の返事をした女子生徒に尊敬の眼差しを向けているのだ。

同時に、自分もあれくらい肝が据わっていれば、知らない人に話しかけられてもちゃんと応じて交友関係を広めることができるのにと羨ましくも感じた。

人見知りの海愛にとって、あまり接点のない人と話すのは非常にハードルが高い。どうすれば人見知りを直して交友関係を広げられるのか――それが目下の悩みだった。


そんな海愛が隠れて成立したばかりのカップルを眺めていると、背後から不意に声をかけられた。


「海愛、そんなところで何してるの? 早く教室に戻ろうよ!」


驚いて振り向く。


「あ……彩香(さやか)……」


そこにはよく見知った少女の姿があった。


その少女の名前は吉宮彩香(よしみやさやか)。海愛の家の近所に住んでいて、幼稚園の頃から仲の良い幼馴染みだ。身長は海愛よりも高く、長い髪をポニーテールにしていて、発育もよい。細くきれいな肢体にくびれのある腰回り、そして豊かなバスト。海愛が密かに羨むほどグラマラスな身体の持ち主だ。

実家が老舗の銭湯で小学生の頃から家業を手伝っており、不特定多数の客の相手をしてきたためにコミュニケーション能力が高く社交的だ。

スタイルだけでなく、性格も海愛とは真逆なのだ。


ちなみに彩香の実家の銭湯には海愛も子どもの頃から頻繁に通っていて、この春からその銭湯でアルバイトをすることが決まっている。幼い頃から慣れ親しんでいて何人かの常連とは知り合いだし、気兼ねなく話せる幼馴染みもいるし、何より海愛自身お風呂が大好きなので、銭湯で働くことにしたのだ。そして、できればこの仕事で人見知りを克服したいとも考えていた。


彩香が、ぼうっと立ち尽くす海愛の顔を覗き込む。


「何かおもしろいものでも見つけたの?」


どうやら彩香は告白の現場を見ていないようだ。


「ううん、何もないよ。彩香こそどうしてここに?」


胸の前で両手を振る。なんとなく今見たことは内緒にした方がよいと思ったのだ。


「あたしは教室に戻ろうと思ったら、海愛がここでコソコソやってるのが見えたから呼びにきたの」

「あ……そうだったんだ。それじゃあ早く教室に戻ろうか」


両手で彩香の背中を押してこの場から離れることを促す。


「うん。早く戻らないと担任の先生が来ちゃうもんね」


それ以上何かを聞こうとはせず、海愛に背中を押されるがまま彩香は歩き出した。

そのまま昇降口へと向かい、上履きに履き替える。この高校では体育館に行くには一度屋外に出る必要がある。体育館に着いてから体育館用のシューズに履き替えるのだ。

昇降口には生徒は一人もいなかった。新入生はみなそれぞれの教室に戻ったのだろう。

海愛と彩香は急いで自分たちのクラスへと向かった。


「それにしても、彩香と同じクラスで良かったぁ……クラスが違ったらどうしようって直前まで不安だったよ」

「海愛は人見知りだもんね。あたしも、もし違うクラスだったら、海愛のことが心配で勉強に集中できなかったかも……」

「保護者みたいなこと言わないでよ。……ていうか、どっちにしろ彩香は勉強なんてしないでしょ」

「あ~言ったな~! あたしだって高校生になったんだから勉強頑張ろうって思ってるもん!」

「ふふ。頑張ってね」


そんな会話をしながら廊下を歩いていると、途中でひとりの男子生徒と出くわした。


「やべぇ! 教室間違えた!!」


海愛たちの方に向かって走ってくる新入生の男子生徒。今日入学したばかりのため、まだ自分のクラスの場所を把握しておらず、教室を間違えたようだ。

男子生徒とすれ違う海愛と彩香。

彩香は特に気にしていなかったが、男子が苦手な海愛は驚いて後方に飛び下がってしまう。

そして、その時に足を絡ませ尻もちをついてしまうのだった。


「きゃっ!!」


海愛が可愛らしい悲鳴を上げる。


「ええ!? 大丈夫!?」


廊下を全力疾走していた男子生徒が急停止した。ぶつかったわけでもないのに急に悲鳴を上げて転んだ海愛を見て心底驚いている様子だ。


「あ、大丈夫だよ。気にしないで」


海愛に代わって彩香が答える。海愛が昔から極度の人見知りで特に男子に対して苦手意識を持っていることは彩香もよく知っているのだ。だから男子とすれ違っただけで驚いて尻もちをついた海愛を見ても至って冷静だった。


「でも……」


気にするなと言われても無理なようで、彼は海愛のことを心配して視線を向けてくる。

海愛はあわてて目をそらした。


「あたしが面倒見ておくからキミは自分の教室に戻りなよ」


彩香がなおも説得を続ける。


「まぁそう言うなら……」


ようやく納得してくれたようで、二人に背中を向けると、そのまま走って行ってしまうのだった。


「……男子行ったよ」


男子生徒の姿が見えなくなったのを確認してから彩香が海愛に手を差し伸べた。


「ありがとう……」


差し出された手を片手でつかみ、もう片方の手で臀部をさすりながら立ち上がる。


「それにしても相変わらずだね。男の子にいちいち驚いてたら日常生活を送るのも大変じゃない?」


彩香が少し呆れたと言わんばかりの視線を送ってくる。


「う……私だって人見知りを直したいんだけど……」


人見知りのせいでいろいろと苦労しているのは事実なので、直せるものなら直したい。しかし、そう簡単に改善できないから悩んでいるのだ。


「そっか……直したいって気持ちはあるんだね。……って、そろそろ教室に行かないとまずい!! とりあえず急ごう」


彩香が急に時間を気にし始めた。


「そうだね。早くて行かないと!!」


入学式が終わってからだいぶ時間が経過してしまっていることに海愛も気づく。廊下で立ち話をしている場合ではない。

二人は急いで教室に向かった。


「ふぅ……よかった。先生はまだ来てないみたいだね」


彩香が教室のドアを開け、中に入る。

海愛も彩香に続いて教室に入り、自分の机に座った。

そして、海愛の前の席に彩香が座る。この二人は席も近いのだ。今のところこの学校でまともに話せる人が彩香しかいない海愛にとって、クラスが同じというだけでなく席も前後という偶然はとてもありがたいものだった。


何気なく教室を見回す海愛。担任の教師がまだ来ていないため、雑談している生徒も多く、教室は非常に賑やかだ。

そんな喧騒の中、前の方の席から男子生徒たちの会話が聞こえてきた。


「えっ!? 修也……お前、彼女できたのか!?」

「ちょっ……声がでかいって!!」


その会話が聞こえてきた方へ視線を向ける。

そこには先ほど体育館裏で告白をしていた男子生徒の姿があった。どうやら告白に成功して彼女ができたことを友人に報告したようだ。


――あ……あの人、同じクラスだったんだ……


クラスメイトであったことに少し驚くが、よく考えたら彼も新入生なので、同じクラスになる可能性は充分にある。


――まぁでも、この先あの人と関わることなんてたぶんないよね……


彼女ができたという報告を受けた友人が、本人から詳細を聞き出そうとしている。きっと高校生になったその日に恋人をゲットした修也に仰天し、また羨ましくも思っているのだろう。


そんな男子たちから視線を戻し、海愛は再び正面を向いた。


それと同時に教室のドアが開き、担任の女性教師が入ってきた。

ざわついていた教室が静かになる。

担任が教壇に立ち、みなの視線がそこに集中した。

黒板に自分の名前を書く教師。

それからすぐに生徒たちの自己紹介の時間となった。


人前で話すことが苦手な海愛にとってはここが本日最大の難所だ。


――どうしよう。うまく自己紹介できるかな……


緊張と不安に襲われる海愛だったが、その間にも生徒たちは次々に自己紹介を終える。

とうとう海愛の番になってしまった。

イスから立ち上がり、挙動不審になっているのを自覚しながらも何とか口を動かして言葉を発する。


「あさのみあ……です。えっと……」


クラスメイト全員の視線を感じるため、どうしても緊張してしまう。

それでも名前の後に出身中学だけは言うことができ、最後に「よろしくお願いします」という言葉を添えて、無事に“自己紹介”という高校生活最初の関門を突破することに成功したのだった。


その後も自己紹介は進み、最後の生徒が名乗り終えると、簡単な説明会が始まる。校則や授業についての説明だ。

それが終わると、本日の日程はすべて消化となり、高校生活初日はこれで終了となった。本格的な授業は明日から始まるのだ。


担任が出ていき、静まりかえっていた教室が再びざわつき始める。あちこちから「この後どうする?」とか「部活決めた?」といった高校生らしい会話が聞こえてきた。


そんな中、海愛は無言で帰り支度を始める。


すると、前の席に座っている彩香が海愛に体を向け、話しかけてきた。


「ねぇ、海愛。週末ってヒマ?」

「……週末? 特に予定はないけど何で?」


教科書やノートをカバンにしまう作業を中断し、問いに答える。


「じゃあさ、今週の土曜日に草津温泉に行こうよ!」

「……どういうこと?」


急に温泉旅行に誘われたことに困惑する海愛。


「もちろん一緒に草津温泉に入りに行こうって意味だよ」

「そうじゃなくて、何で急に温泉に行こうなんて言い出したのか聞いてるんだけど……」


当然の疑問を口にする。

彩香は笑顔で話し始めた。


「あたし、前から草津に行ってみたかったんだけど誘える相手がなかなかいなかったんだよね。みんな勉強とか部活で忙しいらしくて。両親も仕事があるし、妹はまだ小学生だから連れて行くのはちょっと不安だし……でも海愛なら部活には入らないだろうから、誘えば一緒に来てくれるかなって思ったの」


確かに彩香は実家が銭湯を経営しているだけあって大の風呂好きだ。温泉に興味があってもおかしくはない。


「そうだったんだ……でも草津温泉って群馬県だよね? 東京からなら日帰りできる距離だけど、知らない場所に行くのはちょっと怖いかな……」


見ず知らずの土地を訪れることにどうしても抵抗を感じてしまう海愛。たとえ日帰りできる距離だとしても、知っている人が一人もいない場所に行くのは不安なのだ。


だが、彩香は諦めなかった。


「そんなに怖がらなくても大丈夫だから、一緒に行こうよ! せっかく高校生になって行動範囲が広がったんだし」

「でも……」

「それとも他に何かやりたいことでもあるの?」

「そういうわけじゃないけど……」


やりたいことなんてまだ見つかっていない。だから彩香の誘いを断る理由は特にないのだ。

それに、海愛も彩香と同じくらいお風呂が好きだ。幼い頃から銭湯に通っているうちにいつの間にか好きになっていた。銭湯でアルバイトをしようと思ったのも、人見知りを直したいというのもあるが、何よりお風呂が好きだからだ。


「ねぇ……海愛は人見知りを直したいんだよね? だったら勇気を出して行動しなきゃダメだよ。そうしないと何も変わらないままだからね」


それを聞いて、確かにその通りだと感じた。行動しないと現実は何も変わらない。怖くてもやってみることが大事なのだ。

それに今回は草津まで行って温泉に入って帰ってくるだけだ。体力やコミュニケーション能力が必要になることはまずないだろう。そこまでハードルは高くないと言える。

だから海愛は、彩香と一緒に草津温泉に行くことを決心した。


「うん、そうだよね。私も行くよ、温泉」

「……本当に? やった……それじゃあ土曜日の朝八時頃に迎えに行くから準備して待っててね」

「わかった。八時だね」


こうして海愛と彩香の日帰り旅行が決定した。

行き先は群馬県の草津温泉。


――草津温泉かぁ……どんなところだろう? ちょっと楽しみになってきたかも……


ついさっきまでは不安だったのに、行くと決めたら楽しみになってきた。目的地はそこまで遠くないし、彩香もいるので何とかなる気がしてきたのだ。


土曜日が少し待ち遠しくなりながら、中断していた帰り支度を再開する。


そんな海愛に、


「……そうだ! もうひとつ海愛に言っておかなきゃならないことがあるんだった」


彩香が真剣な表情で話しかけてくるのだった。


「な、何……?」


あまりに真剣な瞳に、体が硬直してしまう。

もしかしたら、とても重要なことを伝えようとしているのかもしれない。得体の知れない緊張感が全身を襲った。


「すごく大事なことだからよく聞いてね……」

「う、うん……」


やはり深刻な話のようだ。

静かに話の続きを待つ。

勿体ぶるように間をおいてから、彩香がゆっくりと口を開いた。


「海愛……高校生にもなってあのパンツはどうかと思うよ? 無地の白は色気無さ過ぎだって。もうちょっと可愛い下着を選びなよ」

「………………は?」


一瞬、彩香が何を言っているのか理解できなかった。

だが理解できた瞬間、顔が急激に熱くなるのを感じた。


「み……見たの!?」


あわててスカートを押さえ、赤い顔で彩香を睨みつける。少し涙目になっていた。


「うん。海愛、さっき廊下で男子に驚いて転んだでしょ? その時に見えたの」


彩香があっけらかんとした様子で答える。

どうやら廊下で尻もちをついた時に見えてしまったようだ。

あの時は気づかなかったが、言われてみれば角度的に彩香には丸見えだったかもしれない。

あまりの羞恥の念に、朱色に染まっていた海愛の顔が真っ赤になり、体がわなわなと震えだした。


そんな海愛をからかうように彩香が続ける。


「その様子だと、どうせブラも色気の無いものをつけてるんでしょ?」


気が動転し過ぎてまともに声を出すこともできない。そのせいで言われたい放題だ。

そして彩香は最後にとんでもないことを言い出すのだった。


「そうだ! 海愛の下着、あたしが選んであげようか?」

「余計なお世話だよっ!!」


怒気と羞恥の入り混じった海愛の叫び声が教室に響き渡った。



 


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