第5話 決意

日本に帰って俺は学校に登校した。


周囲からは奇異の目で見られる。


(そりゃそうだよな。普段こねぇんだし)


ため息を吐きながらカバンを机に置いた。


チラッ。

普段俺をいじめてくるやつらに目をやったが今日は俺に興味が無いらしい。

ありがたい話だ。


そう思ってたら男のクラス委員長が話しかけてきた。


「おはよう。古賀くん」

「お、おはよう」

「毎日ゲームしてるのかい?」

「まぁね」


俺がたまに登校してくるとこうして話しかけてくる。


「たかがゲームだよ?勉強した方がいいんじゃないかい?」


そう言われて内心イラッとする。


(たかがゲーム、ねぇ)


なんでこいつらって人の趣味を下げるような発言を平気でするんだろうな。


俺からして見たらサッカーなんてたかがサッカーだし野球もそうだ。

たかが野球。


しかし、それを口にすることは無い。

なぜ、ゲームなどだけこんなに世間の目は厳しいんだろうな、と思う。


が口にはしない。


俺が黙ってればそれで終わる話だからだ。

んで、黙ってると俺の左手に目を向けてくる委員長。


「包帯なんてしてどうしたんだい?」


あのタトゥーのようなものを見られたくなくて包帯をしてきた。

誤魔化そうと思ったら委員長は聞いてきた。


「タトゥーかい?」

「なぜ知ってる?」


そう聞くと委員長は自分の左手を見せてきた。

そこには俺と同じタトゥーがあった。


それから委員長は言った。


「僕だけじゃない。日本中の人たちに突然現れたみたいなんだ。迷惑だよね」


そう言ってる委員長。


どうやらこれがあるのは俺だけじゃないらしい。


シュルっ。

包帯を外した。


してても無駄だろう。

全員あるなら包帯なんてしてる方が不自然だ。


「ネットを見てるとゲーム世界に行けるみたいだね」


そう話しかけてくる。


俺以外にもゲーム世界に行ってる奴がいるのか。


「委員長は?」


聞いてみるとこう言った。


「たかがゲームだよ?行くわけないじゃないか。暇があれば勉強。忙しいんだよ僕は」


それから委員長はこう続けてきた。


「ゲームで稼いだお金は日本でも使えるみたいだけど、肉体労働なんて僕はやだね」


そう言ってる委員長。


聞き間違えか?

いや、詳しく聞いてみよう。


「え?日本でも使える?」

「うん。スマホにユグペイっていうアプリが勝手に入ってるんだって」


そう言われて俺はスマホを取りだした。

ロックを解除してホーム画面を見て見た。


すると、見慣れないアプリが入ってた。


「なんじゃこりゃぁあぁぁぁぁあ!!!!」


委員長はこう言った。


「起動したらゲームで稼いだジェル(?)っていう通過が日本円に換算されてこっちで使えるんだって」


「ごくり」


唾を飲み込んで俺はユグペイを起動してみた。


すると


残高:2兆円


となっていた。


(まじかよ……)


やべぇことになってんぜ?


って思ってたら委員長はお気持ち表明してる。


「学生の本分は勉強だよ。ゲームじゃない。なんでも話を聞く限り1時間50円くらいしか稼げないみたいだよ。僕は思うね。こんなことやってないで勉強しようよって」


ぺちゃくちゃお気持ち表明して席に戻っていく委員長。


俺はそんなお気持ち表明をいっさい聞いていなかったが。


思う。


(早退するか。バカバカしい。勉強する気失せたわ)


俺はそう思ってカバンを手に取ると教室を出ていこうとする。

そのとき、入れ違うように担任が教室に来ていた。


「お?ちゃんと来たんだな古賀。ってどこ行くんだ?」

「早退します」

「早退?!せっかく来たのにか?!ってかこれじゃ早退ってか欠席扱いだぞ?!」

「欠席扱いでもいいです。勉強する必要性を感じなくなりました」

「お、おい?!古賀?!」

「失礼しやーす。もう登校しないと思いまーす」


軽く返事して俺は教室を出ていく。


そして、そのまま近場の駅に向かうことにした。


駅近くのハンバーガーショップに入った。


「いらっしゃいませー」


そう声をかけてくる店員に注文してからユグペイで決済することにした。


注文金額は1000円なのでユグペイを信じるなら余裕で決済できる。


『ユグペイっ!』


って機械音が鳴った。


それを見てた店員が驚いてた。


「ユグペイで決済する人初めて見ましたよ。もう1000円も稼げるなんて凄いですねー」


店員は美人な女子大生?っぽくて、そんなことを言われると悪い気はしなかった。


「そうなんですか?」

「うん。初めて見ましたよ。あ、良かったらユグドラシルで落ち合いませんか?私初めてでよく分からないんですよ。教えていただけると嬉しいんですけどー」


って話しかけてきたけど適当にやんわりと断っておくことにする。


(ゲーム廃人とライト層がつるんでもいい事なんて、なにひとつないよ)


ポテトをつまみながらスマホで匿名掲示板にアクセス。

するとスレッドがたくさん立ってた。


ユグドラシルについてのスレがいっぱいだった。


軽く見てみたが


(さすがに、俺と同じ始め方をしたやつはいないんだな)


そしてスレを見ていて分かったことがある。


この紋章を使っていける世界は全員同じ世界である、ということ。


つまりユニークモンスターなんかを誰かが倒してしまうともう復活しないということだ。


ってなると。


(俺が全部倒す。報酬も、富も名声も全て俺のものだ。強い武器も装備も)


パクっ。


カリカリのポテトが美味い。


(時間を浪費してる暇なんてないな。早く飯食ってユグドラシルへ向かおう)


ポテトとハンバーガーを軽くたいらげてゴミ箱にシュートっ!


ジュースだけを手に取って俺はそのまま店をあとにすることにした。


スレッドや他のSNSを見ていて気付いたことがある。


どうやら既にパーティを組んでいる人間が現れ始めている、ということだ。


だが俺は入らない。

なぜなら、報酬の山分けなど、嫌だからだ。


(俺が全てを手に入れる)


面白くなってきたじゃないか。


ゲームってのはライバルがいると楽しくなるからな。


正直対戦相手を一方的にボコボコにしたり、他のプレイヤー相手にマウント取ってる時も楽しいんだよな、ゲームは。


ダイヤモンドソードをお持ちでないっ?!

ぷぷっー。


ってな風に。


ちなみに一番楽しいのは普段イキってるプレイヤーにマウントとる時だ。

あの顔真っ赤なんだろうなーって瞬間が1番楽しいんだよ。


電車を待ちながらジュースを飲んで俺はスマホで掲示板を見ていた。


掲示板のパーティというのもあるらしいので見ていた。

すると、現在一番進んでいるプレイヤーの名前が判明した。


レベル20くらいの一条という女が一番最前線らしい。


それにしてもれれれれ、レベル20wwwで最前線www


あれれー、見間違いかなー?w低くないっすか?w


俺?俺はレベル2500


あー、だめだ。

テンションおかしくなってんなぁ俺。


ふふっ。

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