第44話 弟子育成

どうも二階堂 明だ。

私の体が燃えているが問題ではない。

案の定、手でパンパンと体を叩くとすぐに消えてしまった。

チャガマから貰ったマスターローブのおかげでノーダメージだ。一応感謝しておこう。

それにしても、手で殴れないのは厄介だ。厳密に言えば殴ることは可能だが、こんなバカ弟子のせいで手の治りが遅くなるのも癪に障る。


「師匠行きますよ‼」


馬鹿の一つ覚えみたいに突っ込んで来る火種。だが付け焼刃の策を弄して来るよりは良い判断だ。シンプルイズベスト、コイツなりに成長していると思う。

まぁ、暴走気味のコイツを褒めても意味は無いのだが。

仕方ない戦い方を変えるか、普段は敵の攻撃など受けて肉を切らせて骨を断つスタイルなのだが、今回は足を使おう。


”タンタンッ”


私は素早くステップを踏んで、超スピードで右にスライド移動。

これにより、元居た場所に自分の幻影を残すことが出来るのは一般常識だと思う。知らないのであればそれは修行不足なので鍛え直すことをオススメする。

私の幻影に殴り掛かろうとする火種。その隙を逃す程、私は甘く無かった。

火種の横っ腹に蹴りを見舞ってやった。


“ゴッ‼”


「ガァ‼」


短い悲鳴を上げて横に飛んで行く火種。しかし地面と激突する前に空中で態勢を整えて、両手両足で着地。獰猛な獣の様な姿勢で私の方を見て笑顔を見せる。

敵に笑顔を見せるとは、何処までも頭がお花畑な奴である。


「師匠、今の凄いですね。分身の術が使えたんですか?」


「今のは二階堂流活人拳【陽炎】だ。超スピードで動いて、元居た場所に自分の幻影を残す技だ。私向きじゃない技だから封印していたが、今日は特別に解禁だ。」


いかん、師匠として弟子に問い掛けられると饒舌に返してしまう。難儀な役割になってしまったものだ。


「へぇ、陽炎。どうやってやるんですか♪」


「今のお前に教えるわけ無いだろう。さぁ、戦いを続けよう。」


「もう、冷たいですよ師匠。」


それにしても、本当に見事なまでに衣装が黒く変色している。こんなに分かりやすく闇落ちするなんて、前の自分を見ているみたいだからやめて欲しんだが。


「それじゃあ行きますよ‼バーニングサラマンドラ‼」


次は魔法で攻めて来る火種。黒い炎の蛇の様な物が、螺旋を描きながら私に襲い掛かって来る。ほぅほぅ、絶対私には出来ない魔法じゃないか、やはり魔法少女としては火種の方が素質があるんだな。だが総合的な力では、やはり私に遠く及ばない。

私はいつもの様に両手の親指を弾いて、圧縮した火を飛ばし始めた。

すると黒い炎の蛇の体を貫通し、そのまま飛ばした火は火種に向かって飛んで行く、蛇と火種をいっぺんに攻撃する。これが私的な効率化である。腕全体を使わなければ、怪我が悪化する心配も無かろう。

しかし、火種も成長しているのか、この程度の攻撃は両手に炎を纏わせて薙ぎ払って行く。中々やるじゃないか。

と、私はもしかして弟子の成長を喜んでいるのだろうか?

柄にもないことを。だが少しばかり気分が高揚したのは厳然たる事実である。はぁ、やれやれ私にも焼が回ったもんだ。

黒い蛇を完全に掻き消した後、私は自分の弟子に向かって突っ込んで行った。

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