第12話
一方の闇族王ミズミは至って少食。毎食果物が出ていれば文句一つ言わず、量も今までの王の中で最も少なかったのだが、それが一変。この側近の黒髪の男は身の丈以上の量を喰うのである。牛ほどの大きさの魔物をそのまま分断して焼いたステーキも、彼にかかれば一食分。さすが喰族、貪食な一族である。そのあまりの食いっぷりに、従者の闇烏たちは皆、こっそり隠れてその様子を眺めるほどであった。そう、姿を見られたら、また自分たちが食べられるのではないかと警戒していたのである。
「す、すいません、われらの準備不足でございます……。ハクライ様、申し訳ございません……」
唯一隠れずに彼の足元に控えていたのは、やはりあの年老いたカラスであった。自分を見下げてくる長身の男に、怯えるように視線を向けながらカラスは頭を垂れた。
「ハクライ……お前、はじめに食いたい量を伝えておけ。準備するじいさんたちが気の毒だろ」
その上、肝心の主である闇族王は、準備の至らなかった従者たちを逆に気遣う程である。それには年老いたカラスは恐縮してしまっていた。
「い、いえ、ミズミ様……!」
「それもそうだね。ごめんね、じーちゃん」
加えて大食いな男も、無邪気に笑ってそう詫びてきたのである。カラスはますます萎縮してしまった。
そしてこの大食いな男も一応王の側近ということで、年老いたカラスは彼の食事以外にも何かと気を遣っていたのだが……
「ん、俺広いベッドがあればどこでもいい」
と言って、やはり王が使っていたような広く立派な部屋には目もくれず、かつての王の従者達が使っていた廃墟のような部屋をやはり自室として選んだ。王の時同様、家具なども追加するかと気を遣ったのだが、全て断られた。
また彼も男性ということで、歴代の闇族王の時のように、夜のお相手として女性が必要かとこっそり尋ねれば、
「俺、別に好きでもない女の人犯すの趣味じゃない」
と言って、夜の奴隷の必要もあっさりと拒否した。
「どうにも……ミズミ様もハクライ様も……何処か似ておられるようじゃのう……」
側近となった男の身の回りの世話をしてみて、年老いたカラスはそれを実感していた。ある意味で王と同じ様な対応でいいのなら、今後対処はしやすい。そう考えれば少しばかり気は楽だった。
しかし、同居人が増えたことで王の方にはちょっとした問題が発生していた。
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