第2話 幼馴染、又は戦友、又は

ライガーは家はアパートの階段を上がり、玄関を開けた。


「フー!ギリセーフ!」


「3分アウトだ馬鹿野郎」


キツい口調で返答したのはアデン、台所で晩飯を作っている。紺色の瞳をした男で紺色の長い髪の毛を後ろで束ねている。とても真面目な性格で当たり前と言われる事が当たり前にこなせるタイプで正義感が強い。


「ライガーおかえり!何そのお金?」


優しい口調で返答したのは紅一点、ヒイラギ、ソファーで寛いでいる。栗色の瞳で茶髪、ショートヘアの子だ。三人は政府により集められてから常に行動を共にし育って来た同い年で、今回のヴァンパイアハント適合試験を受け、三人共合格した。


「この金?拾った」


「嘘だな、お前、またカツアゲしたろ!今回ばかりはバレるかもしれねえぞ!」


「(何でバレんだよ...)大丈夫だよ〜そもそもあいつらが絡んで来たんだぜ?カツアゲする気ならカツアゲされても文句言えねーだろ?」


「カツアゲし返したらアウトなんだよ馬鹿、正当防衛くらいにしとけ」


「ん〜...本来ならヴァンパイアハントは崇拝される職業なんだけどね。だって天使って呼ばれるくらいだし!」


「へ!天使なんか社畜と変わんねーよ、俺はどうせなら夢持って挑みたいぜ!デケェ夢をな!」


ライガーは知った風に鼻を擦りながら言った。


「はいはい神様ね〜、そもそも神様なんて胡散臭過ぎない?私は正直、人の味方かすら怪しいと思うけどな〜」


「俺は宗教の様なものは信じない。存在したとしても人類とは無縁の者だろうし、その方が良いとさえ思う」


「だーもう!そうゆうめんどくせー話じゃないの!この世界でトップになって崇められてーのよ俺は!」


「その時は人類の為にお前を殺さなきゃだな」


「ププッ大魔王の登場で草ァ〜!」


「なんだと〜!このやろ!」


ライガーはアデンにちょっかいを出した。


「おいやめろ馬鹿!包丁使ってんだぞ!」


賑やかで騒がしい、これが三人の日常だ。


「「ニュースです、先程渋谷にて、吸血鬼の仕業と思われる残忍な事件がおきました。可視化術士のマークが胸のバッチにあった為、被害者はヴァンパイアハントの職員である時村信雄様と思われます。現場には吸血鬼と争ったと思われる後があり、警察とヴァンパイアハントが事件の解明を急いでいます。現場近辺にお住いの方はいつも以上に気をつけ、不審な者を見かけたら直ちに警察かヴァンパイアハントへ連絡をしてください、中継は以上です」」


「え、時村って今日の最終面接官だよな?」


「ああ、その様だな。ただの不幸事では無さそうだ」


「ライガー、あんたは葬式参列した方が良いんじゃない?彼がいなかったらあんた不合格だった訳だし」


ライガーは気魂テストと座学テストが不合格だった、特に気魂は大切な種目の為、それが不合格だとヴァンパイアハントとして就職するのは本来絶望的だ。だが最終面接があり、それには可視化術士である時村が面接官を務めていた。時村の可視化術とは未来を見る事が出来るが、どの場面の未来を見えるかは定まっていない。


「めんどー。俺のどんな未来を見たんだろーな」


「今じゃ聞くにも聞けないしな」


トゥルルルルル!


固定電話が鳴り出し、アデンが電話を取った。


「はいもしもし」


「もしもし、警察の加藤です。突然で申し訳ないのですがニュースは見ましたか?」


「はい、渋谷でヴァンパイアハントの方が亡くなられた件ですよね?」


「はい、その件で時村さんが血文字で「A」と思われる文字を書き残していました。Aと言えば今日面接だったA班の貴方達三人が該当します。至急警察署まで来て頂けますか?」


「良いですけど...ヴァンパイアハントの通勤先は警察署で良いんですかね?詳しい事は後日連絡すると言われていたもので」


「あ、大丈夫ですよ。ヴァンパイアハントの方々専用の課が全国になりますので、警察署に来て頂ければわかります」


「はい、わかりました。至急向かいます」


「はい、宜しくお願いします。失礼します」


プツ、ツーツーツー。


アデンは受話器を置くと二人に内容を伝え、三人は家を後にした。

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