異世界

 女の声がうるさくて、

 目を閉じると、草原で横たわる若者の姿がえた。


 あ!


 そこへ、背中に羽の生えた小さな少女が近付いて、

 若者の身体を あちこち観察している。


 蝶のように飛び回る少女が、若者の顔を覗き込み、

 小首をかしげ、

 ゆっくりと 手を伸ばし、

 指先で 若者の頬をつつく。


 つん、つん


 頬を突かれても、若者は目を覚まそうとしない。



 ―――あれ、オレなんじゃない?


 そう、思ったとき、



『えぇ~。そうなんですかぁ? ほんとうに? いやだぁ〜、間違えちゃったのかなぁ』

 と、間延びした声が答えた。







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