【ヤクソ・クースィトイスタ-要するに第十六話-】ヒーローに憧れるボクっ娘☆彡【ケルタイネン・ルク-黄色の章-01-】

 ボクの名前は、村上紗耶香。十三歳。中学二年生だよ。

 よく勘違いされるけど、男の子じゃなくて列記とした女の子だよ。

 でも、ボクも男の子に生まれたかったなぁ。

 ボクのパパが戦隊モノのヒーローだったんだ。俳優さんだよ。

 それでボクもヒーローに憧れていたんだけど、ママはもう中学生になったのだから、女らしくしなさいってうるさいんだよ。

 でもね。

 ヒーローじゃないけど、最近、魔法少女にはなれたんだ!

 それで悪の組織と日夜、戦ってるんだ!

 凄いでしょう!

 ただ魔法少女のコスチューム、もう少し男っぽいのが良かったなぁ。

 あのブーツのかかとが高くて歩き難いんだよね。

 でも、魔法少女になるとね、凄い力持ちになれるんだ!

 それにどんな攻撃受けても、痛くないしすぐに怪我が治るからへっちゃらだし!

 あー、でも、この間、セミの怪人におしっこかけられたのは参ったなぁ。

 ああいう攻撃は勘弁してもらいたいなぁ。

「紗耶香!」

 ボクを呼ぶかわいらしい声の方向を見ると、幼馴染で親友の茉優ちゃんがいる。

 ボクとは違って女らしくてかわいらしい女の子。

「何、茉優ちゃん」

「紗耶香は相変わらずイケメンだねぇ、女にしとくのが持ったないよ」

 そう言って茉優ちゃんはボクの顔をまじまじと見る。

 ボクの顔は俳優であるパパ似なんだよね。

 そりゃイケメンにもなるさ。

「ボクも男の子が良かったな。そしたらパパみたいなヒーローになれたのに」

 ボクが男の子ならママも、女らしくしなさいなんてうるさく言わなかっただろうに。

「紗耶香は女の子なのに少年みたいなところが最高に良いんだよ。にしても俳優さんになるの? でも、紗耶香の顔の良さならピッタリな職業だねぇ」

 茉優ちゃんは何度も深く頷きながらそう言ってくれるけども。

 ボクに俳優は無理だよね。

「演技はできないけどね」

 俳優かぁ、パパみたいになれたらいいけど、演技ができないボクじゃ絶対に無理だよね。

 そもそも人前もあんまり好きじゃないし。

 それでもヒーローにはなりたいんだけどね。ほら、ヒーローは大体素顔を隠しているじゃん?

 魔法少女は顔を隠してないけど、本来のボクより少し女の子っぽい顔つきしてるし。

 他人のような気がして、少しは平気なんだ。

「紗耶香のパパさんもイケメンだもんね、この間テレビで見たよ」

「なんか出てたっけ?」

 言われて考えるけど思い出せない。

「バラエティ番組だったけどね」

「あー、ボク、それは見てないかも」

 バラエティ番組に出てるパパはあんまり好きじゃないなぁ。パパにはずっとヒーローをやってて欲しいから。

 まあ、パパがヒーローやったの何て一回だけなんだけど。

 もっとやってくれないかな。

「あっ、そうだ、はい、これ」

 茉優ちゃんがなにかを思い出したかのように、鞄からピンク色のかわいい封筒を大事に取り出してボクに渡してきた。

 香水でも振りかけてあるのかな。すごくいい香りがする。

「なに? 手紙?」

「手紙は手紙だけどね、ラブレターだよ。私の部活の後輩から」

 茉優ちゃんは笑顔でそう言うけど、ボクは困った表情がすぐに顔に出ちゃったよ。

「えぇ…… ボク、今は男子に興味ないよぉ」

 男子にしては随分かわいい手紙だね。

 ただボクは色恋沙汰ってよくわかんないんだよね。

 友達は皆、興味ありって感じなんだけど、ボクは全然興味ないし、そういうドラマ見てもつまらなくて寝ちゃうよ。

 たぶん、根が子供なんだと思う。

 未だにヒーローに憧れちゃっているし、多分そうなんだと思う。

「相手は女の子よ」

 と、茉優ちゃんに言われて、ボクは驚く。

「そっちはもっとないよ」

 俳優のパパ似な顔だから、こういうことはちょくちょくあるだよね。

 でも、何度体験しても驚いちゃうよ。

 それに、今は女子はもちろん男子にも興味ないんだよね。

 ヒーローにはなれなかったけど、本物の魔法少女にはなれたんだから。

 今は正義のために、平和のためにがんばらないと!

「えー、そーなの? 紗耶香モテモテだよ。後輩だけじゃなくて先輩もイケメンなのにかわいくて好きって言ってたよ」

「もう、なんなの……」

 そりゃ、好意を寄せてくれることは悪いことじゃないけど、ボクは誰の気持ちにも答えられないよ。

 いつか来るのかな、ボクも誰かに恋する日が。




「そして、この黄色の魔法少女か」

 ワシにはこの黄色の魔法少女が一番、魔法少女として積極的に思える。

 あやつだけは魔法少女として使命を全うしている、そう思える。

 今時珍しい奴よ。

 だが、それだけに敵対しているワシらに容赦がない。

 しかし、それは毒電波の怖さを知らないからだ。

 なら、説き伏せることは可能なのかもしれぬな。ワシらとて自らの平和のために日夜、毒電波と戦っているのじゃからな。

「今までの怪人はほとんどこの黄色に殴り飛ばされてるっピ!」

「しかも、グルグルパンチでな。恐るべき魔法少女だ」

 そう、この黄色の魔法少女の中身は恐らく幼い。

 戦闘慣れもしていない。

 なのに、使命のためにいの一番の駆け付け、最も積極的に怪人と戦っておる。

 正義感にあふれた少女、いや、少年なのかもしれぬな。

「カミキリムシ怪人に噛みつかれてもケロっとしてたっピ! 怪我一つ負ってなかったっピ!」

「毒電波遮断怪人・ゴマダーラ・カミキーリか。普通のカミキリムシが人間大になると一トンにもなるというが、奴の噛む力はその三倍の三トンもの噛む力があったにも関わらず黄色の魔法少女を倒すに至らなかった、なぜだ?」

 さすがに魔法少女と言えど、三トンもの力で噛みつかれたりしたら、何かしらのリアクションくらいあっても良いはずだ。

 じゃが、あの黄色の魔法少女は噛みつかれた後、少し驚いて、その後何もなかったかのように怪人に腹パンして倒しておった。

 痛みを感じない魔法少女なのやもしれぬな。

「おかしいっピ! 痛がる様子すらなかったっピ!」

「それと奴が魔法や魔法の武器を使っているところ見たことがない。差し詰め無敵の肉体が武器であり、その持ち主といったところか」

 ふむ、まだ仮ではあるが、恐らくは体が傷つかない、そんな魔法の肉体を持った者なのだろう。

 言うならば、魔法の武器がその肉体であり、まさに無敵の肉体を持つ魔法少女なのだろう。

 もしくはそれに類する能力を持っている。

「どうするっピ! どうするっピ! そんな相手倒せる相手がいないっピ!」

「ならば、こちらも不死身の怪人を使うしかない」

「そ、そんな怪人いたっピ!?」

「忘れたか、マスタ・ケイジュよ。お土産でもらったイナゴの佃煮に怪人化の魔法を使ったことを」

 お土産で貰ったはいいが食べる気がしなかったのでな。

 実験とばかりに怪人化してみたが、まさかあのような事になるとはな。

「あ、あぁ…… あのなんか甘い匂いがする怪人っピ? 佃煮にされる過程で足を取られてまともに動けなかった怪人だっピ!」

 こやつめ、怪人のことは覚えていても、その後のことはまるで怪人達を見ておらぬな。

「奴は怪人としての生を受けた後、血の滲むような努力を重ね、マダムマンティスにも勝るとも劣らない実力を手に入れたのだよ」

 うむ、まさに努力の怪人と言えよう。

 その志も高く崇高、まさに武人と言った怪人よ。

「そ、それは知らなかったっピ! そんな根性を持った怪人がいたとは知らなかったっピ!」

「しかも奴は武術に関して天賦の才を持つ。失った後ろ脚など今の奴には不要よ」

 そう、今の奴は様々な武術の天才であり、努力家でもある。そして一度佃煮になっていることで、その体はゾンビともいえる物に変化しておる。

 武術を極めし奴ならば、必ずや魔法少女を打ち取ってくれるに違いない。




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