第29話 ハーフエルフの長くなるお話 ②

最初の千年余りは、平穏だった。

この地の気候は温暖で、危険な大型生物も皆無で、時折侵入してくる人型生物さえ排除していれば何も問題なかった。

それでも、拠点としていた星間ロケットの風化は無視できなくなってきていた。

それ以外にも、星間ロケットは人型生物の知的好奇心を刺激するのか侵入者はあとを絶たず私達兄弟姉妹だけでは確保が難しくなってきていた。


やむを得ず近隣の人型生物の集落を全て排除した後に、星間ロケットは結界を張った上で着陸時に出来たクレーターに落とし込んで埋め込んだ。


事故が起きたのは、五千年程経ったある日のことだった。

火山の噴火だった。

結界は張ってあるものの、星間ロケットへの通路が塞がれてしまった。

事前に通信装置の予備は持ち出せたものの、これ単体では定時通信が成功したかどうかを確認できない。

それでも、コールドスリープ中の両親達の希望の光を閉ざすわけにはいかない。

百年に一度の、定時通信。

決められた信号を、同じパターンで指定された座標に繰り返し送信する。


その方向には、私達の故郷があるのだろうか?

安全を考えれば、そこには何も無いと考えるのが自然だろう。

敵対する勢力が通信座標を手に入れたとしたら、攻撃目標を与えることになりかねないからだ。

攻撃は、物理的ではなくてもなんとでもなる。強力な電磁波を一瞬送るだけで破壊工作になるのだから。



※※※※※※※※※※



「涼様、残念ながらもうお時間です。シャワー浴びて着替えましょうか。」


「………………………………………もう少し、いや、最後まで聞きたかったな。」


僕の上に跨って繋がったままで話し続けた桃華さん。


「夕食の後で、またお話し出来ますから。」


「お〜い、涼君!桃華さん!ご飯出来たわよ?いつまでもまぐわってないで早く来てね!」


………………………………………柚香さんだ。


「早く返事くれないと開けちゃうよ〜?」


「柚香様、開いてますよ。どうぞお入りください。」


「えっ、ちょっ、まっ………………………」


まっ、不味いです今開けられるのはっ!


「開けないわよっ!桃華さん、早く来てくださいねっ!」


「ちっ、残念。」


………………………………………桃華さん?ちっ、残念じゃ無いでしょっ!柚香さんに見せつけてどうするんですかっ?

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