第23話 心の声が

「あのね、もし良かったらなんだけど、私の事、お父様にきちんと紹介して欲しいな〜って?

多分だけど、第一印象は最悪だったろうから。」


柚香さんの要望は、もっともなお話で。


「ん、任せて!」


柚香さんの耳元に寄せて呟いてから、


「父さん、紹介が遅れましたが、こちらが僕とお付き合いさせて頂いている龍ケ崎柚香さんです。この場を借りて、紹介させて下さい。」


父さんの反応は、これ以上無いくらい驚愕の表情だった。


「………………………………龍ケ崎、さん、ですか?あの、『龍ケ崎』?」


「………………………………そうです。あの、『龍ケ崎』です。」


お付き合いしてる事に驚いたのではなくて、柚香さんの名前に驚いている、父。

柚香さんが僕には良くわからない答えを父にして、なんとなく困った表情になったのは何でだろうか?


父が僕にアイコンタクトしてきたけど、何のことかわからないから柚香さんに任せることにした。


「お父様、私自身は『龍ケ崎』とは関係ありません。今の所は、ですけど?」


「………………………………『今の所は』なんですね。」


「そうです。『今の所は』です。」


二人で納得してるようだから、良しとしておこう。


「じゃ、柚香さん、行きましょうか。一度戻ってガスを復旧させないとね。電気代も払っておかないと止まってしまうからコンビニ寄ってね。」


「そうね、行きましょうか。お父様、後ほど改めてご挨拶させて下さい。」


梶山さんに改めてご挨拶してから、柚香さんの運転で僕のマンションへ。


「柚香さん、紹介の仕方、あれで良かったんだよね?」


「うんっ♡嬉しかったよ〜っ!お父様、ビックリしてたね。」


「………………………………付き合ってる事よりも、柚香さんの名前を聞いてビックリしてたみたいだけど?」


「あ〜、それはね、今晩お祖父様に紹介する時に説明するね!」


…………………………………そうだった!

柚香さんのお祖父様に、お呼ばれしてたんだった。


今晩、僕は、無事に帰れるんだろうか?


「大丈夫!私が守ってあげるからねっ?」


「あれ?声に出てましたか?」


「ううん、心の声が聞こえたのよ!」


………………………………そうか、僕は今、そんなに不安そうだったのかな?

もっと、しっかりしないといけないな。

僕が柚香さんを守らないといけないんだよな。


よしっ、気合を入れて、頑張るぞっ!

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