第15話 依頼完了

「………………………………この用紙にサインを頂くのが、飲食代金を立て替える条件になります。」


駅裏繁華街の片隅にある、とあるホストクラブの応接室。


「何なの、これは!」


「見ての通りです。あと、サインする前にこちらもご覧ください。金咲羅さん。」


「………………………………誰のことですか?ヒッ!」


渡されたのは、離婚届の用紙と指名手配書。

手配書の写真を見て、短く悲鳴を上げた。


「もし、この場でサインして頂けない場合には外でお待ちのお友達にも手配書これをお見せしたいと。」


「………………………………主人は、この事を知っているのかしら?」


動揺を隠せない口調で尋ねられた。


「勿論です。直接、離婚調停の依頼を受けましたので。あと二つ、一つは横領した財産の返却も求めます。明日朝までに私の事務所まで全てお持ち下さい。そうすれば、この用紙のことは黙っておきますよ。もう一つは、娘さんの養子縁組を無断でされましたね。解消に必要な手続きにご協力願います。」


養子縁組の事はハッタリだったけど、無言でうなずいたので当たりだったようだ。


「明日、朝イチで娘さんの金園羅さんを連れて私の事務所まで来て下さい。よろしいですね?」


明日は土曜日、学校も休みのはず。

売春させてる暇があったら、キチンと連れてきて欲しいものだ。


離婚届と養子縁組解消に必要な手続き用紙にに無事サインをしてもらって、最低限の依頼完了。あとは、明日素直に事務所まで来るかどうか。

まあ、来なければ、離婚届と養子縁組解消届けを提出してから警察に通報するだけだ。

今捕まると、母娘二人共死刑もあり得る手配だからな。


翌朝、金母娘は、横領した財産を持って事務所まで来た。

引き出した現金だけでなく、娘が持ち出した貴金属類もかなりの量が有った。

娘にも手続きに必要なサインをもらった。


二人にお引き取りいただいた後に、持って来たバッグを職員立会で封印してから、依頼主の涼さんのお父様に連絡を。


今回の依頼は、事前の調査が完璧だったので楽勝でした。

いつもこれくらいの割の良い依頼だと嬉しいのですが。


あとは、最後の仕上げとして、あの人にお知らせしておきましょう。

まだ、知らないでしょうからね。

知ったら、あの二人、無事に済むとは思えませんしね。

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