第2話 名前、教えてくれるかな?

「おまたせ〜!」


10分も待たずに彼女が笑顔を振りまきながら、僕が掛けたカウンターへ駆け寄ってきた。


「うわっ、眩しいっ?」


「え〜?そんなにぃ〜っ!」


「うん、ホントに眩しかったよ。その笑顔!」


「あ〜、良かった。無理に誘ったからドキドキしながら来たから。」


いつも見慣れていた制服シャツにエプロンではない初めての見る彼女の私服は、薄い白なシャツブラウスに茶色なスカートだった。

彼女が眩しかった理由は、大きなお胸が強調された服装だったから。視線を悟られないようにするには、もうお顔を見続けるしかないんだよね!

カウンター席の隣に、自然な感じで腰掛けた彼女が、


「雨、しばらく止まないみたいだね?」


「それより、後ろの裾が乱れてますよ?」


「えっ、ホントだ〜、いっけな〜い、急いで着替えたから、教えてくれてアリガトね!」


チョットだけ下着が見えかかってたから、何となく得したような気分。

スマホの雨雲レーダー画面を僕に見せながら、


「一時間は雨脚強くて止まないみたいだね。場所、変えようか。君、家は何処かな?」


「……………………歩いて5分位だけど?」


「ご家族は?」


「……………………一人暮らしだけど?」


「よしっ、決まりだね、行こうか!」


思いっきり眩しい笑顔で、言い切ってきた。


「えっ、何処へ………………………………」


「勿論、君んちね、さあ、レッツゴー!」


右手を取られて、立たされて、指を絡めてニギニギされながら歩き出して。


「………………………………強引ですね?」


「そりゃぁ、やっとお誘いかけられたんだからね!」


「へっ?」


表へ出て、


「さあ、行くよっ!」


あれっ?傘は!と問いかける暇もなく掛け声とともに駆け出した彼女に手を引かれて辿り着いた1台の車の前。

小型な国産車だけど結構な高級車だし!


「さあ、乗って!」


戸惑う暇もなく強引に連れ込まれたような車の中で、


「うわ〜、結構濡れちゃったね?」


肩から胸にかけて濡れ透けた身体にドキッとしながら、


「……………………もしかしてユズカさん、大学生だったんですか?」


「あれ?名前、教えたっけ?」


「いえ、名札で。合ってますよね?」


「そっか〜、あれ?もしかして私の事、高校生だと思ってたのかな?」


「ええ、失礼しました?同級生くらいかと?」


「ん〜、嬉しいような、そうじゃ無いって言いたいような、複雑っ!」


「なんか、ごめんなさい……………」


「いいって、てゆうか、君、もしかしなくても高校生だったか〜?

ところで、君、名前、教えてくれるかな?」

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