リアクテイル(短文詩作)

春嵐

第1話

 昨日。この場所で殺し合いがあった。

 人同士ではなく、人と、人じゃない何かの。人が勝ったので、特に何も残っていない。

 公園。のんきに座ったり遊んだりしている、みんな。


「異常なし」


『了解。哨戒には戻らず、しばらく逗留しろ』


 いい声の女、の、通信。


「待機了解」


 通信状態でいい声に聞こえるだけ。よくできたシステムだし、よくできたインカム。そしてどうでもいい命の私。


「待機了解」


 普通の声。女。


「なにそれ。ひとりごと?」


 誰だ。制服なのか私服なのか分からない服。最近のトレンドなのか。分からない。


「そう。ひとりごと」


「そうなんだ」


 どけよ。

 隣に座るな。

 邪魔だ。


「昨日さ」


 話す許可を与えていないが。


「見たんだよね。わたし。ここで」


 おっ、と。


「なんか、人と、人じゃない何かがさ。こう、戦ってるのを」


 そういうあれなのか。そうか。

 すぐに通信を入れる。


「コントロール」


『どうした』


「緊急の用件だ。昨日の原因が分かったかもしれない」


『なんだと』


 驚く、いい声。今度は男。


「とりあえずRCC(人と化け物を区別する値)が測れるところまで連れていく。別に何人かつけてくれ」


『付近の哨戒を全部寄せる。近場のカメラは公園出て左だ』


「公園出て左了解」


 隣に座ってる女を掴む。逃げられないように、極力、やさしく。


「来い」

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