第26話 ラノベオタク_迷宮探索を行う1

 ダンジョン内に入ると、空気が変わったのが分かった。

 とりあえず、短距離の〈転移〉を行ってみる。


「問題なく空間魔法を発現できるのか……な? 空間が違うのは、分かるんだけど」


 次に壁を歪ませる。〈空間湾曲〉の確認だ。

 僕には、これしかない。攻撃も防御もだ。通用しないのであれば、逃げ一択になる。


 ――グシャ


 ダンジョンの破壊も可能……っと。

 特に、僕の魔法とスキルには、制限とかなかった。


「食料もたんまりと持ったし、行くか」


 彼等が迷っていたり、動けない場合は時間勝負になる。

 僕は、歩を進めた。


 ――グルルゥ~


 少し歩いたら、異変があった?


『鳴き声?』


 そっと、分かれ道の先を見る。

 緑色の小人がいた……。2匹かな?


『あれ、ゴブリンだよな……』


 ラノベ定番だ。雑魚モンスター。

 どうするか……。僕の目的は、3人の回収だ。無駄な戦闘は避けるべきだ。だけど……不意打ちが一番怖いな。

 それに、〈転移〉は、視界の端までだ。迷宮ダンジョン内は、短距離しかできない。


「〈転移〉もルーラみたいに使えればな……。リレミトとか。(げふん、げふん)」


 考えていると、ゴブリンに見つかった。僕に襲いかかって来たんだ。

 異世界定番だけど、好戦的だな。


「仕方がないか……。向かって来るんだしね」


 僕は、ゴブリンの頭上に〈転移〉して、頭を触った。


 ――ペシ、ペシ……ギリギリ、グシャ


 ゴブリンが捩じれた紐上になった。

 その後、塵になる……。これが、迷宮ダンジョンか……。命を失うと、肉体も迷宮ダンジョンに吸収される。まあ、定番だよね。物理現象としては、意味不明だけど。

 それと、確認できた。


「うん。僕は触れれば、どんな相手であっても倒せるんだな」


 スキル〈空間湾曲〉は、攻撃に使えそうだ。

 ラノベ定番の概念系だな。最強系の一つだ。物質の結合ではなく、空間を操作しているみたいだ。前世でも実現できなかった技術だよね。

 だけど、僕は防御が紙装甲だ。

 やっぱり、僕には戦闘は向かないと思う。つまんない死に方をする未来しか視か見えない。


「僕は、後方支援タイプだよな……。攻撃方法があるからって、勘違いしないようにしないとな」


 稲葉を見ているんだ。勘違いを起こす気はない。

 独り呟いて、歩を進めた。





「ふう~。魔物が多いな。エンカウント率とかどうなってんだ?」


 もう、ドロップ品が100個を超えている。魔物を倒すと石を残す。価値は分からないけど、とりあえず、〈収納〉する。

 体感時間としては、1時間なんだけど……。30秒に一回って、進めないよ。


 ――ガキン、ガキン


 ここで、金属音が聞こえた。

 そちらに向かう。


「うん? 人だ? 冒険者か?」


 狭所で、ゴブリンの大群に襲われている? 前後を塞がれてんじゃん。あれでは、体力が尽きた時点で終わりだな。


「グギャ?」


 ゴブリンは、僕にも気がついたようだ。

 数匹が、僕に向かって来た。


 僕は、短い〈転移〉を繰り返し、ゴブリンに触れて行く。正直触りたくもないけど、命がかかっているんだ。躊躇ったら、自分の命が危ない。

 僕は、ゴブリンを倒して行った。


 ――ペシ……ギリギリ、グシャ


 大軍だけど、この狭所では囲まれる心配はない。矢が飛んで来るけど、見えているし。

 ゴブリンは、予想通り頭がそれほど良くないな。

 同じ行動を繰り返すだけだ。

 だけど、『怯む』という行動がない。勇敢なのか、馬鹿なのか……。


 気の抜けない時間が続く……。


「そこの君!」


 最後のゴブリンが倒れた。

 そうすると、呼ばれたみたいなので、顔を上げる。


「大丈夫ですか? 囲まれていましたけど……」


 足元は、ゴブリンの戦利品で埋まっている。特に石っぽいのが多いな。魔石?

 踏んだら、転びそうだ。


「こちら側も頼む! 前衛が倒れそうなんだ!」


 やれやれ……。この国の冒険者の質が知れるな。





「助かった。礼を言う」


 6人の冒険者が、頭を下げて来た。

 それと、ゴブリンの戦利品は、くれるとのことだった。

 ここで、交渉だ。半分でいいと言ったのだけど、受け取れないと来た。

 交渉の末、僕が8割貰うことで決着した。

 魔物が残す石は、『魔石』だった。燃料になるんだとか。それと、貴金属が少々手に入った。彫金の人に渡そう。

 だけど、思うところがある。


『僕は……、迷宮ダンジョンの攻略に来たんじゃないんだけどな』


 その後、彼等はサポーターとして僕について来てくれた。

 必要ないかもしれないけど、彼等の知識に頼りたいのもある。

 僕にとっては、未知の領域だしね。


「3人組の冒険者を、探しているのですか?」


「そうなんです。探しに来たんですけど、見かけませんか? もう、丸一日潜っているみたいなんですけど……。戻って来なかったんです」


 冒険者が、相談し始める。


「……3人組とは出会いませんでした。もっと奥かもしれませんね。ボス部屋を通って、次の層に行っているのかもしれません」


 なにしてんだか……。食糧とか本当に持って行ってるのか?

 本当に面倒だな。

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