Clair de lune/やわらかな灰

 駐車場に街灯がつく時間になっても、人間形態のマスコットたちとふたりの魔法少女はそこにいた。


 髪をオレンジ色に染めた小柄な少女が、ヒヨコ色の髪の青年を人質に、長身でポニーテールの少女と延々やりあっている。ふたりが肩を並べているところなど想像もできない。なのに、カーテンのすき間から見おろしているうち、ふと声がもれた。


「楽しそう……」


 日が沈みきり、十階の窓にも明かりが差さなくなる。

 服とぬいぐるみの散らかった床の上が見えなくなる。部屋が闇に溶けていく中、淡い外の光をまとう細いすき間にすがりついて、止めどなくこぼしつづけた。


「ずるい……ずるいなぁ……」


 月がのぼる。くしゃくしゃに乱れた灰色の髪がほのかにきらめく。






 Chapter 4――終

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