第2話 ダンジョンに向かおう。

『ありがとうございます。娘が助かりました』

『兄ちゃん助かったわ。ありがとうな』

『かっこよかったよお兄ちゃん』

なんかさっきまで怯えていた村人らしき人達が次々と話しかけてくる。前世ではここまで感謝されたことないから気分がいい。


『あの?旅人さん?のお名前はなんですか?』

名前を聞かれた。盗賊相手には本名で名乗ったけど聞こえてなかったのかな?

せっかく異世界に来たんだしカッコイイ偽名でいこうかな?


『シドだよ。うん、シド』

(好きなゲームのキャラの名前にしよ)


『シドさんか。ありがとな』


『あの?私はエメ、ルスタです。娘のルナ、ルスタを助けてくださりありがとうございました。よかったら、その、お礼として一緒に昼食でも』

助けた娘の母親がお礼をしたいと申し出てきた。


『え、昼食?食べてみようかな』

(昼食か、異世界の料理は気になるし。いいかもな)



エメさんは嬉しそうに

『本当ですか?!ありがとうございます!』

((娘を助けてくれたシドさんのために頑張らなくちゃ))




……とある民家……



『お待たせしまた。お口に合うかわかりませんが』

大皿に乗った料理が出てきた。焦茶色の豆の煮もの?蒸した芋?焼かれた骨つき肉に黒いソースのかかったステーキ。日本では観ないような感じだ。美味しいのだろうか?


『いただきます』

(えーいせっかく作ってくれたんだ食べてみようではないか)


(パク)

焦茶色の豆の煮物を食べだ。

(う、なんやこれ。不味い)

味が薄いわけではない。た、だなんか変な味がする。気分が悪い。


『どうですか?』

料理を持ってきたエメさんがじっと見てくる。正直不味いなんて言えない。言ったとしてもこの感じ、料理が下手なのではなく料理の思想が日本と違う。塩とか加えた程度で改善できそうにない。


『お、美味しいですよ』

なんとか笑顔で言ってみた。顔が引きずってないか心配だ。エメさんを悲しませるわけにはいかない。


『本当!本当ですか!おかわりはたくさんありますからね!』

((よかった。シドさん気に入ってくれたみたい。結婚式に出すようなレベルの料理出してよかった))


(パク、パク、う、パク、パク、う)

味を感じないように急いで食べる。途中途中吐きそうになるが、人を悲しませるよりかはいい。

(不味い、キツい)



なんとか全部食べ切った。

どうやらこの異世界の料理は僕には合わないらしい。


『シドさんて強いですよね。どこでそんなに鍛えたんですか?』


『え、いやたまたまだよ』


(はぁ?!有馬くん!それはないわよ!女神様にもらったて言ってよ。私信仰されにくいんだから)

なんか頭の中で自称女神が叫んでくる。


(面倒くさー)

(なによ!お仕置きが必要なようね)




……心の中……

気づいたらまあの白い空間にいた。


『あ、まただ』


『何よ!また、て!』

自称女神アナが僕に向かってほっぺたをプクーと赤く膨らませて怒ってくる。

(面倒だな)


『なによ!面倒て!あなたの心の声だって聞こえてくるのよ!大体貴方達は私に対する信仰心が薄いのよ!もう少し、もう少しなんかあるでしょ…………う、ひどいよ』

なんか怒ったと思ったら自称女神アナはシクシク泣き始めた。


(まずい。泣かしてしまった)


『いや、まあ、でも女神様のお陰で盗賊から村人を守れました。ありがとうございます。すごいですよアナ様は』


『本当?よかったー。貴方だけよこんな私を励ましてくれるの。他のクソ神どもは私に一つも励ましの言葉くれないし…………ねえ!どうしたらもっと私のこと褒めたりしてくれる?ねえ!』

自称女神アナが切羽詰まって感じて僕に近づいて聞いてくる。


『そ、それはえ、えど』

(アナさんのおっぱいデカくて近づかれると緊張しちまう)


『ん!そうなの!おっぱいがいいの?!ならいいわ!えい!』

自称女神が僕の手を掴んで僕の手のひらを自身の胸に押し付けた。手が彼女の胸に埋まる。服越しでも柔らかさが伝わってきた。


『うわ!何するんですか!』

僕は驚いてすぐに手をどけた。


『何!?てこれは、あれよ!ご褒美よ!私の言うこと聞いた』

自称女神もなんか焦って視点があっていないし、顔も赤い。


『そんなの!要らないですよ』


『は!そんなのとはなによ!貴方が私のおっぱいみて欲しそうにしてたからしてあげたのに!』



『いや、その、そうだけど。そんないきなり。それにご褒美は別にいらないです。それに女神様がそんなことしなくても僕は感謝してますから』


『え、あへ?ご褒美要らない』

自分の体張る必要がなかったのに気づいて気まずそうだ。

『……』



『ま、まあ、いいわ。有馬くんよくがんばりました。ご苦労』


『は、はい』


『ではつ、次は歩いて2日のところにあるダンジョンに行ってもらいます!』

自称女神はぎこちないながらも次の命令を僕にしてきた。


『どうやってですか?』


『どうやって?……それは有馬くんが自分で考えなさい!なんでもかんでも教えるわけじゃないだから!』

なんとも投げ捨てな自称女神様だな



……民家の中……

気がつくとさっきの民家の中だった。


『シドさん?シドさん?大丈夫ですか?』


『あ、ああ大丈夫』


『そうですか。なんか急な黙り込んだので』

エメさんが心配そうに僕を見てくる。

『はー?そうですかね?あ、そうだ!ダンジョンに行きたいのですが、行き方知りませんか?』


『え?ダンジョンですか?えーと近くのですとこの村から北の道を歩いて二日にあるルーザの中規模ダンジョンがありますね』


『そうですか。ありがとうございます』


『ダンジョンへ向かうのですか?』

なんだかエメさんが少し寂しそうに聞いてくる。


『まーはい。そうですね』

なんか気まずい。


『そうですよね。あれほど強いと。ダンジョンに向かうのでしたら明日の早朝に荷物をそこのダンジョンまで運ぶ馬車がきます。それに乗っては?乗車賃は私達が払いますよ』


『本当ですか、ありがとうございます!』


『いえ、村を救ってくださった村の英雄様にこんなことしかお返しできませんし』

なんだか申し訳なさそうにエメさんは言った。




……翌日の早朝……



『お兄ちゃんもう行っちゃうの?』

『兄ちゃんもう少しこの村でくつろいでいいんだぜ』


ダンジョンへ行く馬車の前で村のみんなが見送りに来てくれた。


『シドさん。私の娘を助けてくださりありがとうございました。……たまに、いえ。いつかまたこの村を訪れてください。いつでも歓迎します』

((行ってしまうのねシドさん。もう少し村にいてくれたら……))

なんだかエメさんが何か僕に言いたそうだけどこれ以上止まると後ろで睨みつけてる馬車の運転手がキレそうだ。



『村のみんなさんお元気で。ありがとう!さようなら』

僕が馬車に乗って。村のみんなにお別れを言うと馬車は発進した。

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