第12話

私が読んでいたものは現実に存在するのか、少し目を疑っていました。「私たちを殺してほしい」だなんて、なんでそんなものを書いたのでしょうか。そして、結果としては望み通りになっているのでしょうか。


願ったり叶ったりなことなのか、最初からそういった計画になっていたのか、分からないですが、そんなことを知りたいとも思えませんでした。


このとき、私は他にも何枚かの紙があることに気がつきました。何が書いてあるのか、興味を捨てきれずに、それらも読みました。もしかしたら、何か他のことが書いてあるかもしれない。そんな、考えるだけ無駄な理想を抱いていました。


当然、そんな都合のいいことが起きるわけがありませんでした。他に書いてあったものは、ついさっき読んだものとほとんど変わらないものでした。


「私たちはどこまでも最低なクズだ」「あいつらが生きていることは許されない」「私も同じだ」こんなことを、何度も何度も書いていました。そして、最後の文章がこれでした。


???「殺せ!その手で復讐をするんだ!」


これをどのような気持ちで読めばいいのでしょうか。そんな気がしていたとはいえ、この資料を読んだ後では、今回の事件が計画殺人であるということが簡単に理解できてしまいます。


私は、どうすることが正しい選択なのか、少し考え込んでしまいました。こんな惨劇が起こった時点で、正しいも何もないでしょうけど。少し考えて、何か知っていそうな人たちがいると気付きました。


そして、その人たちは四階にいました。私が気づいていないだけかもしれませんが、他に人がいる気配がなかったので、好機だと確信しました。間違いなく、今行くしかないでしょう。


コンコンコン、とドアをノックすると、その人は何も言わずに、ドアを開けてくれました。


涼「はーい、誰ですか。あ、一織さん」


一織「すみません、突然。少し、お聞きしたいことがあって」


めい「いおりちゃんだー。どーしたのー?はいっていいよー」


涼「え、ここ僕の部屋…」


めい「りょーくんはどーでもいいの。いまはいおりちゃんゆうせんね」


この瞬間、めいさんの様子が明らかに変化していました。目付きは鋭くなり、口調もふわふわした感じが一切ない、もはや恐怖すら覚えるものになりました。可愛いだとか、声に出さないで良かったかもしれません。


涼さんの部屋に入りました。部屋の中は整理されていて、嫌な感じが全くしませんでした。女性二人を部屋に入れられるのも、そういうことかもしれません。


私は、さっそく本題に入りました。


一織「私、さっきまで資料室にいたんですよ」


涼「資料室か。確かに、行ってみたらどうかと提案されていたな」


一織「そうです。で、資料室に行ってきたんですけど…」


めい「どうしたの?」


一織「そこで、異質な、と言いますか、とにかく、一つの資料に目を通したのですが、それについて、どうしても二人に聞きたいことがあって」


涼「一旦何なんだ?」


めい「おしえておしえてー!」


一織「いや、説明が難しいですね…」


涼「じゃあ、僕たちが読んでみてからでもいいかな?」


一織「いいんですか!?是非ともお願いします。その資料がこれなんですけど…」


私はそう言って、資料を渡しました。「サツキ」という人物が書いた、殺してほしいという願望が綴られたものです。私は全く知らないですが、吉崎さんと交流が深かった二人なら、何か教えてくれるとは思っていました。


しかし、それを見てすぐに何かがおかしくなりました。何か、と言うには分かりやすすぎる変化でしょうけど。


めい「ウソ!?何でこれを一織ちゃんが持ってんの!?」


一織「え?資料室で読んで、それについて二人に相談したくて…」


めい「どうしよう。このままだと計画が全部崩れる…」


涼「計画?なんのことだ?」


一織「それに、なんだか以外ですね。めいさんって、そんな話し方出来るんですね」


めい「!?」


そう、本当に様子がおかしかったのです。言うなれば、同じ姿をした別人が話してるような感覚で、明らかな変化をしていました。


すると、彼女は落ち着いたのか、深呼吸をしてから話し始めました。


めい「あーあ、やっちゃったなー。じゃあ、もうあんなことしないでもいいよね?これでも結構頑張ったのよ?ゆるふわ系女子目指してさ。ま、ゆるふわ系って割にはには極端だっただろうけど」

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