第9話

彼が出て行ったところで、竜二さんはさらに楽しそうな口調で、「あー、やっぱああいうクズ煽るのは最高だな」と言っていました。正直なところ、私にとっては竜二さんもクズではあるような気はしてました。声には出してません。怖いので。


そして、話題は人造人間へと変わりました。


一織「そういえば、私、人造人間にまつわる資料を見つけたんですよね」


フラン「何それ?どこで見つけたの?」


一織「二階の資料室です」


めい「わざわざそんなところをしらべるなんて、たんてーってすごいねー。かべにみみありーってやつ?」


カンナ「えーっと、多分違うかと」


めい「んー?」


もしかして、思ってる何倍かはめいさんってバカなんでしょうか。いや、大学生だし多分そんなに酷くはないはず。イメージだけど。


めい「それに、たんてーがびしっとじけんをかいけつするのって、なんだかかっこいーよね」


やっぱりめいさん、好き。愛してる。アイラブユー。ジュテーム。ウォーアイニー。サランヘヨ。


葉月「それで、その資料に書かれていた内容は?」


葉月さんが、話題を元に戻してくれました。


一織「えっと、人造人間の開発実験を行った結果が書かれてました。人造人間の開発中に、研究者の一人が麻薬中毒になってしまって、そのせいで殺人事件が起こってしまったようです」


フラン「殺人事件…」


カンナ「フラン、大丈夫?」


フラン「ありがとう。大丈夫だよ。そんなことより、その殺人事件って、いつ起こったの?」


一織「四ヶ月前です。資料の日付のところにはそう書いてありました」


フラン「四ヶ月前…パパが死んでから、この研究所で何があったの…?」


純「そうか、フランさんのお父さんが死んでからの出来事だったのか。忘れてたな」


一織「ちょっ、純さん!?あなた、いくらなんでも失礼すぎですよ!?」


純「ハッ、やっべ。すみませんでした!」


フラン「いや、そこは気にしないでいいですよ」


純「でも、何があったのかは気になるな。他に調べられそうなものは?」


一織「どうなんでしょうか。全部に目を通したわけではないのでわかりませんでしたが、読めなさそうなものがたくさんあったんですよね」


カンナ「でも、読んでないのもあるんでしょ?だったら、明日読んでみたら?」


一織「確かに、それはそうですね。今日は遅くなりそうですし、明日そうします」


私の明日の予定が決まったところで、解散となりました。こんな空間ではまともな精神を保てないと思いますが、なんとか一日目を、何事もなく乗り越えられそうで安心です。


………いえ、何事もなかったなんて、嘘ですね。確かに、人が死んでいたのです。私が面識ない人だというだけで。


しかし、彩月さんは何が原因で死んでしまったのでしょうか。いや、自分でオーバードーズだと断定していました。わざわざ調べてまで断言しました。何で忘れてしまったのか、さっぱり分かりませんね。忘れた理由を把握している方がよっぽどどうかしているのですが。


まあ、そんなことは大して重要なことでもないはずなので、気にしない気にしない。明日やることも決まったわけですし、それに備えて、ゆっくり寝ましょう。


この研究所にゆっくりと寝られそうなベッドがあってよかったです。探偵として死体を見る機会は多かったですが、決して慣れているわけではないというか、何度見てもショックですね。ましてや、フィクションなどではない、現実で起こった惨劇を目の当たりにしていたのですから。


よし、寝ましょう。おやすみなさい。


___他の人たちはみんな寝たか?


探偵がすぐそこにいる環境で殺人…ねえ。自分はとんでもない危険人物なんだと実感するなあ。


でも、こんなことで諦める訳にはいかない。このためだけに、長い間機会を伺っていたんだ。諦める理由がどこにある?自分が恨みを抱え続けて随分と経ったが、ようやく機会に恵まれたんだ。無駄にしてたまるか。


ガチャッ、ギィィ


よし、なんとか開けられたぞ。鍵が壊れていて、内側から鍵をかけれないなら開いて当然ではあるけども。


あいつは…よし、寝ているな。ぐっすりと気持ちよさそうにしやがって。どれだけの苦痛を浴びせられたと思っていやがる。そんな顔を見ていると、余計にイライラさせられる。やっぱり、殺すことを躊躇しなくてもよさそうだな。


そのままの勢いだ。あいつの苦しむ姿を見てやるんだ。行け。行け。行け!あいつの首を捕らえろ!


大雅「ングッ!?なっ、なんだ」


お、驚いているな。でも、本当の苦痛はここからだ。


大雅「離せよ!」


しょうがない。優しいから、特別に離してやるよ。ま、そんなことしたところで…


大雅「ッ…!?ガハッ!」


無駄だよ!もうどうすることもできないからさ!


あっははは!最高だ!直接その死に様を見れて幸運だよ。


死ね。師走 大雅。


___翌朝、月影 一織は嫌な予感を察して、いつもよりもずっと早く目を覚ましました。日が登ってすぐでした。


曖昧な意識のまま、部屋の外に出ました。そういえば、昨日はシャワーを浴びていませんでした。どこかにシャワーはないかな?


そう思っていると、廊下に、見慣れたけど見たくないものがありました。血です。間違いなく、部屋から廊下に出ていました。


夢だと期待しました。幻覚だと期待しました。それだけ、現実を受け止めたくなかったのです。それが、どれだけ無駄な考えだとしても。


一織「大丈夫ですか!?」


慌ててドアを開けました。当然、鍵なんてかかっていませんでした。そして、現実ははっきりと現れたのです。


一織「大雅さん!?………やっぱり、死んでる…。一体誰が?」

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