決闘

初めて貴女を抱き締めた日の腕のぬくもりを忘れることができずにいた。貴女は誰にも悟られぬように瞳を涙に濡らして、小刻みに肩を震わせていた。それを安心させたくて、顔は見ないようにして、いっそう強く抱き締めた。貴女が初めて人を殺した日の深夜だった。


それから、貴女は人を殺す日々に心を麻痺させるのがうまくなり、もう泣くことはなくなっていった。それが嬉しいような、悲しいような、自分と同じ生き方を選んだ貴女を素直に歓迎できない自分がいたことをここに告白しておく。ゆくゆくは、刃を交え、剣で語り合う仲になるのかもしれないと思ったら、とても辛いことのように感じた。


だが、この幸福感はどうしたことだろう。貴女と自分の殺意がぶつかり、愛憎交わった切り合いに興奮していたことは確かだ。貴女の太刀筋を見極めて避けたつもりだったが、ほんの少し刃が自分の首筋をかすった。貴女は好戦的な光を宿していた瞳をサッとくもらせ、小さく悲鳴をあげて剣を取り落した。自分も地面に倒れ込んだ。傷は大したことなかったが、貴女によって傷をつけられたことで、やっと貴女の心を手に入れた気がした。




首筋に残る貴女の傷跡を愛しくなぞる 夢か現か

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