血染めの雨傘

長尾

瓶詰の魚

 ホームセンターでそれを見たのは、いつの頃だろう。「闘魚」とポップに記されたその魚は、とてもそんな気性の荒いものには見えなかった。


「……聞いてる?」

「ああ、ごめん、魚飼いたいって話だよね。まずは水槽を準備しないと」

「水槽はいらない」

「え?」

 彼女が指さしたのは、瓶に入ったベタだった。そのヒレは天女が羽衣をはためかせて舞っているようだ。やはり、闘う魚というイメージがつかない。

「瓶のなかで苦しくないのかな」

「瓶だからいいのよ」

どういう意味だと問おうとして、遮られた。


「わたしはね、この美しい闘志が、こんな瓶の中でゆっくり朽ちていくのを見たいだけなの」



瓶詰めの魚を飼ってみたいといふ貴女の唇 少し怖くて

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