忍者と魔法使い。時々、超能力者

ALC

第1話妖怪の忍者とエルフの魔法使い。異世界から来襲

忍者の僕と魔法使いの彼女が出会ったのは、とあるコスプレイベントでのことだった。

僕も彼女のことを目にした時、

「めっちゃ凝ってる衣装だなぁ〜…」

と、その他大勢の観客と同じ様な感想を抱いたわけではなく…。

「待て。何で本物の魔法使いがこっちに来てるんだ…?」

この様に思ったのが正直な感想だった。

彼女の正体は明らかにエルフで向こうの世界では森で生活している大人しい種族だった。

そんな彼女がコスプレと称してイベントに参加をして承認欲求を満たそうとしている理由は分からなかった。


魔法使いの私が向こうの世界に飽きてしまい、そろそろ人間にもあちらの世界の事やエルフのことを認知してもらいたいと願った時、その人物を目にすることになる。

コスプレイベントに参加していた私は忍者の男性を発見する。

彼も同じ様にコスプレイヤーと称して忍者の格好をしていた。

だが私には分かる。

彼は妖怪という種族で、その中の忍者という役職の人間だ。

妖怪独特の匂いに血の香りが全身にこびり付いていた。

「忍者だぁ〜」

若い女性が彼に近付いた時…。

私は思わず反応してしまうのであった。


「その男に近づかないでください!」

私は杖を構えて忍者へと照準を合わせる。

「え?なにこれ?何かのイベント発生した感じ?めっちゃリアル感演出するじゃん」

若い女性はおふざけか何かと勘違いしているようで終始ニヤニヤとした笑顔を絶やさなかった。

「ごめんなさいね。コスプレカップルなんですよ。若くてキレイな女性が近付いてきたものだから嫉妬してしまったみたいで…。申し訳ないんですがお引取りください」

忍者は戯言を口にして私を侮辱しているようだった。

「何を…!」

私が口を開きかけたところで忍者は見えない速さで印を結んだようだ。

身体は金縛りに合い動かすことが出来そうもなかった。

口も動かせなければ魔法で解除することも使うことも出来ない。

「そうなの?めっちゃラブラブで羨ましいなぁ〜。お邪魔してごめんなさい。じゃあ」

若い女性が離れていくと忍者は人だかりに一礼して私のことを抱える。

その場から離れていくと私達の話し合いは始まるのであった。


「何でエルフの魔法使いがこっちにいる?」

少し離れた公園のベンチで忍者と魔法使いの会話は始まる。

「それはこっちのセリフなんですけど!?妖怪の忍者が何で人の目に触れているのよ!」

噛みつくような態度で立ち向かってくる魔法使いのエルフに忍者は嘆息した。

「忍者の家業を知らないのか?」

「もちろん知っているわよ!」

「知っていて…その…怖くないのか?」

「怖い?………そう言われると…途端に怖くなってきたわね…こんな人影のないところに連れてきて…まさか…!」

急に怯えたような態度に変わった魔法使いに忍者は呆れてしまう。

「いいや…何もしないよ…」

「正体がバレたのに?忍者って正体バレしちゃいけないんでしょ?」

「うん。まぁ…僕は家業が嫌で逃げてきた身だから…」

「それって…」

「そう。誰かを傷つけるのに嫌気が差したんだ。それが長の命令だとしてもね…」

「里も世界も捨てて逃げてきたってこと?」

「そうだけど…そういう君もそうだろ?エルフは異種族を嫌っているはずじゃないのか?人の目なんて一番気にするだろ?」

「私は森でも変人扱いされていたわ。お前はエルフじゃない!って何度も罵倒されてきた。皆がエルフじゃないって言うなら森を出てもいいよね?ってことでこっちに来たのよ」

「エルフじゃないのか?」

「いいえ。父も母もちゃんとエルフよ?それにこの耳にこの美貌を見れば分かるでしょ?」

「自分で言うなよ…」

そこで一度会話が途切れると公園の対面の広場でマジックショーをしている女性がヤンキーに絡まれているところだった。

「本当なんですよ!種も仕掛けも無いんです!これはマジックじゃないんです!イリュージョンです!」

「あ?イリュージョンだって種も仕掛けもあるだろうが!それを教えろって言ってんだ!」

「一般人には無理です!私は特別なんです!」

「馬鹿にしてんのか!?」

そのままヤンキーに絡まれている女性を無視してその後も二人の会話は続くのであった。


これは妖怪で忍者の僕とエルフで魔法使いの彼女との可笑しなラブコメなのである。

二人のラブコメはまだ始まってもいない。

これからどうなる…。


あと時々、超能力者…。

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