第28話 水族館3

 俺たちは水族館を一周して、最終地点である、お土産店に着いた。


「いろいろかわいいお人形があるね」

「うん。奈由香はどれが好きなの?」

「私はこれかな」


 と、ペンギンのお人形を手にした。


「俺はこれかなあ」


 と、シャチの人形を手にした。なんとなく肉食でかっこいい感じがする。


「雄太。男だね」

「別にいいじゃないですか!」

「いいよ。別に私悪いとか言ってないし」

「まあそうですけどね」

「買っちゃう?」

「いや俺は……」


 と、カバンを取り出し、その中から財布を取る。


「うーん。残高三一〇〇円か」


 お人形は二九〇〇円。変えないことはないが、かなりぎりぎりだ。


「諦めます」

「そう……ドンマイ」

「奈由香は俺の分まで買って行ってください!」

「うん。わかった。雄太の敵は取るよ」


 と、奈由香はお人形を買う。


「あ!」

「どうしたの?」

「クジあるじゃないですか」


 そこにはクジのチケットがあった、詳細を見てみると、クジ……とは言っても当たりはずれの種類は三種類しかない。あたりの大型ぬいぐるみか、小当たりの普通サイズのぬいぐるみか、残念賞の小型サイズのぬいぐるみかだ。残念賞でも完全なるハズレとかではなく、ちゃんとしたものと言うありがたいくじだ。


「私も引きたいな」

「奈由香も?」

「うん。てか、どっちにするか迷うな。クジにするかこのぬいぐるみにするか」

「あー」


 お金の問題も生じたか。俺はぬいぐるみを諦めてクジにすることにした。奈由香はどうするのかだ。


「仕方ないね。両方買うわ」

「お金は大丈夫なんですか?」

「たぶん、大丈夫」

「ならよかった」

「じゃあクジ券も取っていきますか」


 じゃあ、と、クジ券を一つ買い物かごに入れる。とはいえ、俺はこれ一つだけだから買い物かごいらなかった気もするが。今更だが、あのぬいぐるみも欲しかったなあ。お金足りないけど。


「クジ楽しみだね」

「ああ」


 クジと言うものには人間だれしも楽しみなものだ。ギャンブルと言うものをわずかなお金でわずかなリスクで楽しめる。こんなに慰問もはない。


「私の番だ。引くね」


 と、奈由香はくじ引きの機会に手を突っ込む。その機会はシンプルに中でクジ券が空気によって回転していてその中から好きなクジを選ぶシステムだ。


「行くよ、雄太」


 と、奈由香はこちらを見る。


「がんばってください!」


 と、奈由香にエールを送る。


「うん!」


 と、奈由香はクジを選び取り、それを上にがかげた。それはもう中二病なんですが。


「開くよ」

「うん!」


 と、奈由香は選ぶ。


「雄太、だめだった」


 そこには外れと言う文字が残酷にも書いてあった。


「……」


 奈由香は目に見てわかるような落ち込み方W歩していた。これは慰めなければ。


「奈由香。ドンマイです。でも、ほら」


 と、ぬいぐるみを棚から取り、


「これがもらえるから、機嫌なおしてください」

「別に機嫌悪くはないけどなあ。でも雄太ありがとう」


 と、奈由香に感謝された。


「じゃあ雄太頑張って! 私の敵を取って!」


 と、背中を押され、俺もくじを引く。


「当たれ!」


 と言いながら引いた。


「あれ、これって」


 そこに書いてあったのは特賞という文字だった。ん? これって……


「雄太おめでとう!」


 と、その奈由香の声でようやく当たったという事実を飲み込めた。


「雄太、もっと喜んでもいいんだよ?」

「いや、なんか実感湧かなくて」


 まさか当たるとは思ってはいなかったのだ。その実感が湧かなくて当たり前だ。


「まあでもおめでとう!」


 そして、棚から、店員さんに促され、一番上にあるビッグなペンギンのぬいぐるみを手に取る。思ったよりも大きい。直径七十センチ程度はあるだろう。正直手で持つのが精一杯だ。


「雄太手伝おうか?」

「いえ、大丈夫です」


 と、ぬいぐるみを一旦腕の中で上へと移動させる。だが、その重さは変わらないし、持ちにくいことも変わらない。これは……もっとカバン整理しとくんだった。実際、カバンの中には着替えや、ゲーム機、洗面用具などで一杯なのだ。いや、そもそもカバンの中にスペースがあったとしても入ってたかは分からないけど。


「雄太、ぬいぐるみのしっぽを持つよ」

「ありがとう」


 と、奈由香と俺でしっかりとぬいぐるみを背負っていく。だが、何と言うかこの状況……うん。


「あ、写真撮ろうよ!」

「いいですね!」


 と、奈由香は携帯を取り出し、「しっかり抱えててね」と言って形態をかがけて……


「はいチーズ!」


 と、写真を撮った。


「じゃあ送るね!」


 と、『見てみて、雄太が特賞取ったよ!』


 と、グループの方へと送った。


 そして早速……『すごい! え? マジで?』と言う返事が麗華から帰ってきた。『本当です』と俺が返すと、かわいらしいゆるキャラ的なキャラクターがグッドマークを作っているスタンプが帰ってきた。


「じゃあ次は私も入れてもらっていい?」

「もちろんいいですよ!」


 と、「すみません。私たちの写真を撮ってもらえませんか?」と、そこにいた女子大生と思われる女の子に頼んだ。


「じゃあ取りますよ」


 と、彼女が言う。


「雄太、ぬいぐるみの重みに負けないようにしっかりピースとってね」

「うん!」

「じゃあハイピース!」


 と、シャッター音が鳴る。


「じゃあ二枚目取りますね」


 と、もう一枚。


「じゃあもう一枚」

 と、もう一枚。


 結局彼女は一〇枚くらい写真を撮ってくれた。そして取り終わった後。


「こんな感じだけど、いい感じ?」


 と、一枚ずつ見せてくれる。本当優しい人だ。


「大丈夫です! 奈由香も大丈夫?」

「うん大丈夫」

「ありがとうございました!」

 と、彼女に感謝を告げる。


「いえいえ、お二人とも幸せに」


 と言って去ってしまった。お幸せにとは……まあカップルに見えたのならいいことだ。


 そしてそのままで口へと出たが、みんな帰ってきてないようだった。一応集合時間一〇分前なのだが。


「みんな遅いね」

「まあ気ままに待ちましょう」


 と、そのままその場で奈由香と話しながら待っていると、下村さんと麗華が帰ってきた。


「どう? デート楽しかった?」

「デートって……」


 直球すぎる。


「うん楽しかったよ!」


 だが、そんな俺とは対照的に奈由香は普通に返事をした。これはデートと言うことでいいという事なのか!


「私も奈由香と回りたかったのに」


 下村さんが不平を言う。


「仕方ないでしょ。私は雄太と回りたかったんだから」

「ずるいよ」

「まあ次来たときは絵里と一緒に回ってあげる」

「ありがとう」


 そしてそのままレストランへと入った。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る