第15話 大富豪

「よーし配り終わったわね。じゃあじゃんけんしましょう!」

「奈由香、ちょっと待て」


 それに俺が待ったをかける。


「なに?」

「ルール確認しませんか」

「あ、そうだね」


 大富豪はルールが多く地域とか家族によってどのルールが適用されるのか決まるのだ。


 そして話し合いの結果、七渡し、八ギリ、十捨て、革命、縛り、九九車がありになった。


 七渡しは七を出したら誰かにいらないカードを渡せる。八ギリは八を出したら、場のカードを流して好きなカードを出せる。


 十捨ては出したら好きなカードを捨てれる。革命は四枚同じ番号のカードを出したらカードの強さがそれ以降逆になる。縛りは同じ色のカードが二連続で出たらそれ以降はその色のカードしか出せない、九九車は二枚九を出したら、八ギリと同じ効果になると言うことだ。そしてジョーカーは好きな数字、色になる。


「よしやろう!」

「奈由香じゃんけんは?」


 麗華が聞く。


「今からやろうと思ってたのに!」


 と奈由香が宿題してと親に言われたかのような反応をして、そしてじゃんけんをする。下村さん、奈由香、俺、麗華の順番になった。


「行くよ! 三!」


 三が場に出た。まずは普通に攻めていくという訳か。


「四!」


 奈由香は一だけ大きい数字を出した。


「ならこれで」

「雄太、数字言いなよ」


 麗華さんが言う。まさかそういう流れなの?


「別にいいじゃないですか」


 六を出した。


「ならこれで」

「いわないのかよ」

「うん。てか八だから流すねー」


 そしてもう一回麗華の番だ。


「えい!」


 麗華は九を出した。


「いきなり?」


 奈由香が驚く。


「大丈夫計算あってのことだから」

「ならいいけど」

「じゃあ私ね」


 下村さんは十一を出した。


「十一ね! なら私はこれ!」

「お、おい奈由香」


 十三は出せない。縛り中なのだ。つまりクローバーしか出せない。しかし、奈由香が出したのはハートの十三だった。


「あ、ごめん」

「私はいいよ。奈由香が十三持っていることが分かったんだもん」

「絵里? そんなことばれても私は痛くはないわ」

「本当かなー?」


 ちくしょう負けている。大富豪ではなく、恋愛の方で。


「俺はその十三を踏まえて戦うつもりですけどね」

「忘れてよ」

「てか奈由香結局出すの?」


 麗華が聞いた。


「出さないわよ。パス」

「じゃあ俺もパス」


 出せるけど、こんなところで二を使いたく無い。


「私もパス」

「え? 奈由香たちみんなパス?」


下村さんが驚きの表情を出す。


「仕方ないじゃん、縛られてて出せないって」

「なら、奈由香にも出せる数字出したこうか」

「私のこと舐めてない?」

「大丈夫舐めてないから。はい、五」

「舐めてるじゃん……」


 そう言って奈由香は下村さんの頭を軽く叩く。


「まあ出すわ、はい」


 奈由香は六を出した。


「ならば」


 と、八を出す。


「それで次に出すのは……」


 俺は強い勢いで四を二枚出した。


「四です」

「なるほど、二枚出しね」


 麗華はそう呟き、七を二枚出した。


「これで、誰かに二枚渡せるってことで良いよね」


 麗華の確認に俺は頷く。


「じゃあ二枚とも奈由香に渡すわね」

「なんで私なのよ。しかも二枚とも」

「なんか強そうだから」

「私の手札強くないわよ!」


 奈由香はそう言って麗華に怒る。まあ気持ちはわかる。それに対して麗華は「ごめんねー」と軽く言いながら強制的に奈由香の手札にねじ込んでいた。


「じゃあ私ね」


 下村さんは淡々と九を二枚出す。


「これで流して、三を出すわ」

「じゃあ私は四!」

「あなたたちさっきその流れ見たわよ」


 麗華のその言葉で、下村さんと奈由香はさっきも同じことをしていたと気づいた。


「てかあなたたち二枚出しで出してたらよかったんじゃなかったの?」

「あ……」


 奈由香は気づいてなかったようだ。かわいい。


「私はわざとよ」


 それに対し、下村さんは言い訳がましいことを言う。


「じゃあ俺出しますね」


 俺は九を一枚出した。


「じゃあ私は二を出すね」

「は? 二?」


 俺は思わず突っ込んでしまった。ここで二を出してきたのだ。二は切り札、つまりこんな九を出すような序盤に出しては行けないのだ。


「麗華勝つの?」


 奈由香が言う。もうこれは麗華が勝とうとしていることは間違い無いだろう。


「うん、そうだよ」


 麗華の手札を見る。残り六枚だ。だが、さっき七渡しは使った。ということは十捨てだろう。


「はい、十を三枚!」


 見事に上がられてしまった。これは防ぐ術が無い。完勝されてしまった。


「なんでよー。麗華、私に二枚なすりつけて、勝ち上がりとか」

「私もこんな運がいいはずないもの。私の日頃の行いが良かったからかもね」

「ムカつくー」


 その後下村さんにも上がられてしまったので、奈由香と俺の一騎打ちになった。


 ちなみに残りのカードは俺が四枚で奈由香が六枚だ。


 俺は今七と九と二と三と五を持っている。ジョーカーが消えた今九を捨てれたら勝ちだ。それに俺は奈由香が十三を持っていることを知っている。


「行くよ」


 奈由香が十一を出す。


「パス」


 まだ二を出すわけにはいかない。


「雄太くんこの数字も出せないの?」

「出さないだけだよ」


 まだその時じゃないからな。


「なら今度は十三よ!」


 勢いよくカードを出してくる。


「パスです」


 二はまだ出せない。


「次は十三」


 切り札を出して大丈夫かな? 奈由香。


「出さないでしょ」

「うん、出しません」

「なら今度はこれ!」


 奈由香は六を二枚出してきた。あれ、これ負けてね?


「出せる? 出せなかったら私が勝つけど」

「出せません」


 だったら出してたら良かった。


「勝ち!」

「奈由香おめでとう」


 下村さんは一目散に賛辞を述べる。


「雄太、残りの手札はなに?」

「これですよ」

「二を持ってたの?」

「うん」

「危なかった」

「出してたら良かった……」

「それにしてもさ、敬語減ったよね」


 言われてみればそうだ。最初よりもだいぶ減ってきた気がする。


「これで友達って認めてもらえたかな」

「うん」


 奈由香は喜ぶ仕草を見せる。別に俺は元から認めるもなにもという話だが、奈由香が嬉しいのならそういうことにしとこう。




「じゃあもう一試合行こう!」


 その後五ゲームやったが、その内の四ゲームで麗華が勝った。


 麗華さん恐るべしだ。


 ちなみにだが、後でもう少し奈由香にアタックしなさいと麗華に怒られた。

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