第34話 斗升の失踪と如庵の孤独

伊達政宗の自決から数日が経ち、彦根城は重苦しい空気に包まれていた。この中、如庵は信頼する斗升の失踪に直面し、彼の孤立感はさらに深まっていた。


斗升の部屋に足を運んだ如庵は、荒らされたかのような部屋の様子に動揺を隠せなかった。彼らの共有した戦略書類や書簡が散乱しており、斗升の個人的な持ち物もそのままになっていた。


「斗升、一体どうしたんだ?」如庵は心の中で叫ぶ。斗升とは数々の困難を共に乗り越えてきた戦友だった。彼の失踪は如庵にとって計り知れない損失であり、深い不安を抱かせた。


如庵は城内外を捜索するが、斗升の行方についての手がかりは一切見つからなかった。彼は家康の策略を疑い、「斗升が何者かによって連れ去られたのではないか?」と推測した。


秀頼にこの事態を報告すると、秀頼もまた憂慮を示した。「如庵様、これは大変なことです。斗升様がいなければ、我々の計画にも支障をきたす。」


如庵は秀頼を支えるため、さらに力を尽くすことを誓う。しかし、斗升の不在は如庵の心に大きな穴を開け、彼の決意と戦略を揺るがせた。


家康の影響力が日に日に増していく中、如庵は孤独な戦いを強いられる。彼は城内の廊下を一人歩き、斗升との過去の議論や計画を思い返しながら、次の一手を練る。


夜更けになり、如庵は城の屋上に立ち、星空を見つめる。彼の心は不安と寂しさでいっぱいだった。斗升の失踪は、家康の策略の一部である可能性が高く、如庵はこれからの対策に深く思いを巡らせた。


「斗升、お前ならどうする?」とつぶやきながら、如庵は家康に対抗するための新たな計画を練り始める。この闘争はもはや政治的なものだけでなく、個人的な戦いでもあった。如庵にとって、斗升の失踪はただの同志の喪失以上のものだったのだ。

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