Ghost Account
方丈 海
亡霊の呟き
第1話
int DROP[num]={0};
int count=0;
int PP[(num/pari)+1]={0};
int Retry_check[num]={0};
int GetRandom(void);
void Drop(int p[],int a);
int check(int DROP[],int P, int Q);
int Retry(int DROP[]);
srand((unsigned int)time(NULL));
int i,J=0;
int packet[num];
for(i=1;i<num;i++){
packet[i]=i;
if(i%pari==0){
printf("%dP,",packet[i]);
PP[J]=packet[i];
J++;
}
else printf("%d ",packet[i]);
}
/*
「なんですか、それ」
寝ぼけ眼で洗面所に向かう途中、リビングに響き渡るタイピング音に釣られて、テーブル上のノートPCに流れる文字列を思わず覗き込んだ。最初は気恥ずかしさがあったけど、寝間着姿を見られるのも、今では慣れたものだった。
「プログラム言語だよ」
こちらを一瞥もせず、キーボードの上で指を乱舞させながら、緋山(ひやま)さんは答えてくれた。この人の髪がボサボサなのはいつものことなので、彼も寝起きなのかどうかはわからない。部屋着も外着も、いつも黒セーターにジーンズだから、これから外出するのかどうかもわからない。
プログラムというのは聞いたことがあるけれど、本物を見るのは初めてだった。
「この意味不明な文字の羅列の、どの辺が言語なんですか?」
緋山さんは答えない。代わりに、タイピング音だけが続く。作業中に話しかけるなという意思表示として、無視を決め込んでいるのかもしれないと不安になってきた頃、遅れて緋山さんは答えてくれた。
「プログラム言語には、主語や述語がある。文法や構文もある。プログラマによって、方言や鈍りやクセもある。話し相手が人間かコンピュータかの違いだけだ。まさに、言語だよね」
喋っている間も、緋山さんの目と指はノートPCにつきっ切りだった。ディスプレイ上に重なるウインドウは目まぐるしく入れ替わり、キーを凄い勢いでタイピングしたかと思えば、エンターキーを押すと同時に、緑色の英字が雪崩のように黒背景の画面を流れ始める。その間も、別ウインドウで緋山さんはプログラムを育てている。私のような学生からしたら、PCなんて動画や検索の用途くらいでしか使ったことがないので、全く異質な道具を見せられているみたいだった。
「朝ご飯はもうちょっと待っててくださいね。先に顔を洗ってきます」
洗面所でレバーを捻ると、すぐに暖かいお湯が流れた。朝のルーティンを済ませて、自室に戻って制服に袖を通す。携帯が通知を受け取り、振動した。Twitterからの投稿通知だった。アプリを開くと、クラスメートの色んな投稿がタイムラインを埋め尽くしている。
『眠い。あと50時間は寝てたい』
『また人身事後で遅延かよ。死ぬなら他所で死ねよマジで』
『どうしよ、今日は1限サボっちゃおっかな~』
『今日バイト ダルい』
『詰んだ。数学の課題今日まで。一問もやってない。詰んだ』
当たり障りのない、日常味の溢れる投稿がタイムラインを埋め尽くす。至って平和だった。だけど、一見して平和なこの画面に異常が隠れ潜んでいるとは、知らない人が見れば絶対にわからないだろう。
この中に、死人からの投稿が混ざっているなんて。
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