お出かけのアリス

大丈夫かな・・・大丈夫なわけ無いか。

アリスをトイレに置いてきてから、もう10分以上たつ。

その間、どうやって身体を焼かれずに連れ出そうか、とずっと考えていたのだ。

その時。

トイレの中から、甲高い悲鳴が聞こえてきた。

やっぱり・・・もう、なるようになれ!

急いでトイレの中に入った僕は呆然とした。

そこには、便器の中に下半身を沈めて泣き叫んでいるアリスの姿があった。

「早く出せ翔太!抜けんのだ!」


「いいか。シャドラーゼに戻るときは貴様も連れ帰ってやる。まずは拷問にかけてやるからな」

「何で・・・」

アリスのオムツを替えながら、内心ゲンナリしていた。

トイレに置かれたもののどうすればいいか進退窮まったアリスは、浮遊魔法で便器までフワフワと浮かんでいったのはいいが、服とオムツをどうすればいいか思案している間に魔法の効果が切れてそのまま便器に落ちたらしい。

しかもその弾みで漏らしてしまったのだから、結局最悪の事態になっていた。

「それって逆恨みだよね」

「違う。大罪人には相応の罰を与えねばならぬ。このわしの一糸まとわぬ姿を見たうえに、好き放題蹂躙するとはな。万死に値する。トイレで魔力が尽きたのが悔やまれるわ」

結局大きい方の処理もして汚れを拭いたのだが、その事を言っているらしい。

「じゃあ聞きますけどコルデル様、これからウンチやオシッコが出そうになったらどうするんです?」

「露骨に言うな!覚えてろよ。早く成長し魔力を取り戻さねば・・・」

このまま乳児院にとっとと預けてしまおうか。

そう思わなくも無かったが、今でも正気に戻っていない僕がそれを行うのははばかられる。

って言うか、自分が実は正気なのでは?と言う恐ろしい疑惑も頭によぎっていた。

狂気に落ちたにしては、なんか感じがおかしい。

と、言うことは・・・


やっぱりアリスをすぐに手放そう。

いくら京子の娘とはいえ、それは外見だけ。

中身は理不尽ばかりの自称魔法使いという、わがまま女。

とても手に負えない。

そうだ。

コイツはさっき「魔力が尽きた」と言っていた。

と、言うことは今なら身体を焼かれることは無い。

遠い所に預ければ追いかけては来ないだろう。

そうと決まれば。

「コルデル様、今から少し外出しましょうか?」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る