第3章

第15話

「ねぇヒュー

本当に感謝してるのよー」


 列車で、バンコクに向かっているのだが、


「ティファさん

あまりベタベタしないでください」


 ティファが、座席に座っているボクに抱きついて来る。


「えーなんでー」


 胸を、押し付けて来るティファ。


「酔ってるんですか? 酒のニオイがしますよ ??」


 昨日は、凡城さんと遅くまで酒盛りしていたティファ。


「夕べの酒が 残っちゃったかな

今日は まだ呑んでませーん」


 どうやら、お酒は完全に抜けているようだ。


「ホラ 周りの乗客が見てますよ」


 周りの、視線が刺さるように痛い。


「あぁあれはエミリーを見てるのよ」


 スマートフォンで、株価を見ていたエミリーが顔を上げる。


「なんでですか ??」


「タイは まだユルい方だけどアメリカ人難民を見たら石を投げる人もいる」


「えっ ??」


 あの一件で、大量の難民が出たことで各国で問題が発生している。


「ヒューあなたも難民に見られないように努力しなさいよ」


 移民排斥運動の、餌食になりかねない。


「………はい」


 気分が、悪くなるボク。


「もうすぐバンコクに着くわね」


その頃


「ガルオド大佐

ヘリの準備が出来ました」


 甲板に、大型ヘリが2機。


「よし

あの島への上陸作戦だ」


 作戦の、開始を宣言するガルオド大佐。


「了解 !!」


「急げ

乗れ!乗れ!」


 上空へと、舞い上がる2機。

 海上を、滑るように並んで飛んでいる。


「思ったより 大きな島だな」


 植物の、ほとんど生えていない大きな岩山のような島だ。


「どこかに降りれそうか ??」


 島の、上を一周する。


「あの岬の周辺に平らな場所がありそうです」


 断崖絶壁になって、一部が鋭く突き出たところの周囲に平坦な場所がある。


「よし着陸しろ」


「了解」


 無事に、上陸するガルオド大佐の部隊。


「どこかに洞窟があるはずだ

探せ !!」


「はッ !!」


 右手を、前に突き出すガルオド大佐。


「ガルオド大佐 !!」


 大声を、出す隊員。


「どうした ??」


「ありました洞窟」


 ガルオド大佐が、行って見ると人一人が入れそうな穴が開いている。


「よし」


 発見した隊員が、洞窟に入ると、


「うぎゃあー」


 横から、ヤリが飛び出て隊員の防弾チョッキを貫く。


「トラップか………

ケガ人を 搬送しろ」


「了解」


「どうしますか大佐 ??」


 他の、隊員が確認する。


「慎重に進もう」


「了解」


 そうして、いくつかトラップを解除して進むと、


「大佐あれを !!」


 赤く、輝く石が刀に付いている。

 刀は、地面の岩に刺さっている。


「目的のブツだな」


 ガルオド大佐は、ついに見つけた。

 第二次世界大戦で、行方不明になった赤いジュレルを。


「待て

さわるな」


 隊員が、早まって刀を抜こうとする。


「アッチチチチチ」


 刀を、抜こうと掴んだ隊員の手が真っ赤に燃え上がる。


「大丈夫か ??」


 隊員の、様子を見るガルオド。


「ヤケドしました大佐」


 洞窟の、水溜まりに両手を突っ込む隊員。


『ケケケケ

パルスグローブを使わないからそうなる』


 ペ・ギル博士の声が、無線から流れる。


「ちょっと下がっていろ」


「はい」


 ヤケドした隊員を、下げる。


「例の手袋を用意してくれ」


 ガルオドが、指示すると、


「はいどうぞ」


 アタッシュケースが、ガルオド大佐の前に置かれると、それを開く。

 中には、メカメカしい手袋が入っている。


『ケケケ』


 ガルオド大佐が、手袋をはめている様子を見ているペ・ギル博士。


「掴むぞペギル博士」


『早くしろ』


「うおおおおお」


 燃え上がることなく、掴めている。


「おお」


『パルスだよ』


 徐々に、上に上がって行き、


「抜けたぞ」

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