第2章

第8話

「このままではマズいな」


 計画では、寺院遺跡に部隊を配置した後でキャロルを迎え撃って、興産党軍のロボットで背後を叩いて征服する予定だった。


「セオリーなら 前衛にロボット兵を行かせるのだが 軍が展開してしまっているからな」


 最初から、ロボットが出るとわかっていればと後悔するがもう遅い。


「ご決断を」


「ウーム

全軍 一旦停止」


 パオ隊長は、計画の練り直しを迫られる。


『一旦停止』


 各隊員に、連絡が入り中腰で進んでいた兵士が棒立ちとなる。


「なんだよ

あんなのスティンガーでスクラップでしょ !!」


 先頭を、進んでいた兵士がグチをこぼす。


「あれ ちょっと この周囲ってまさか敵だらけじゃあないの ??」


 キャロルの、ディスプレイ上に赤い点が複数浮かび上がる。

 すでに、敵に包囲されているのを知り額に汗が吹き出してくる。


「ヤバ………」


 その時、目の前にジープのヘッドライトが見える。


「迎えに来ましたよ」


 ボクは、まだ事態を把握していないから運転席から飛び降りて様子を見る。


「にゃーん

前にも後ろにも動かなくなっちゃって」


 ティファが、明るく舌を出して言う。


「ちょっと暗いから明日の作業になるわね」


 キャロルの下部に、しゃがみこんで見たエミリーが立ち上がりながら言う。


「あのさあヒュー

悪いんだけど聞いてくれる ??」


 バツの、悪そうに手を合わせてボクになにか頼んでくるティファ。


「………どうしたんですかティファさん

妙に明るいですね」


 どうも、から元気のようだ。


「キャロルのコックピットがあるじゃん

このパイナップルのピンを抜いて上の穴から入れて来て欲しいの」


 そう言って、手榴弾をボクに手渡したティファ。


「えっ そんなことをしたらキャロルは───」


 コックピットが、めちゃめちゃになるだけじゃなく大爆発するかも知れない。


「イイの

これ以上しゃべらせないで………」


 一瞬、悲しそうな顔をするティファ。


「察しなさいヒュー」


 エミリーは、なにかを理解したようだ。


「………わかりました」


 そう言って、トボトボとキャロルに向けて歩いていると、


「待って」


 キャロルの、そばにダッシュするティファ。


「エッ」


「今まで ありがとう」


 キャロルの、右足に抱きついてそっとキスをするティファ。


「………じゃあ破壊します

っととっと」


 キャロルを、よじ登り首の下あたりの出入口の穴に、手榴弾を入れようとしてピンを抜こうとした時、手が滑ってピンを抜く前に中に手榴弾が落ちてしまった。


「なーにやってんだか」


 つっこむエミリー。


「ピンを抜く前に滑らせちゃって

ああっ」


 手榴弾を、探そうとコックピットに入った時、


「どうしたのヒュー」


 ティファが、心配そうな声を出す。


「ロボット兵が来ています

でっデカい

キャロルの2倍以上の身長だ」


 モニターに、映し出される巨体。


「イイから早く戻って来いって !!」


 もう、コックピットを破壊している場合ではなくなっている。


「でも手榴弾が

このままでは みんな死んでしまう

なんとかしないと」

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