レディーfirst

夜影 月雨

第1話 友達が不倫?

 「ねぇ...やっぱり別れよっか」


 5年間、結婚を前提として付きあっていた彼女に突然別れを告げられた。


しかも電話で...。 


なんとなく予兆はあった。


遠距離というのもあったし、会えたとしても1ヶ月に一回会えるかどうか。


 彼女から言われた別れた理由。

 「亮は優しいんだけど、結婚とか考えるとなんか違うなって思って...」

そう言われた。


”そんなに頼りなかったかよ、俺って...” 


仕事もいよいよ管理職に付き始めようとしていた35歳の俺。

これから彼女と結婚をし、子供を産んで幸せな家庭を築こうとしたはずだった。


 急に孤独になってしまった俺。


今まで俺の時間は、全て彼女に合わせて日々を過ごしていた。

だからこうして、急に孤独になると何をしたらいいのかわからなくなる。


築20年の1LDKに一人暮らしをしていた俺。

彼女との思い出がいっぱい詰まったこの部屋のソファーに座り、何げなくスマホを眺めていた。


 すると急に俺の母からラインが届く。

普段母とは必要な話しかしないし、ごくたまに自分からしか送らないから不思議に思った俺。

そしてラインを開き見てみると、その内容を見て、衝撃を受けてしまった。


 「亮が小さい頃からの友達だった海くん。奥さんと別れたみたいだよ!しかも原因が海くんの不倫らしい」

高校を卒業して、彼が大学に行き、一年に一回のペースぐらいで会っていた。

海の方が年上だがずっと一番の友達である。


そして社会人になり、海が結婚した後からは、俺も彼も忙しく、連絡もとらなくなり心配にはなっていた。


 まさかあの海が不倫...?


 嘘だろ?


俺が彼女と別れたのとは重みが違いすぎた。

自分が別れた事もあるが、彼が不倫をした事でも頭がいっぱいになり、心が痛くなってしまう俺。


 電話すべきなのか?


 少しそっとするべきなのか?


どうする事もできず、いてもたってもいられなくなった俺は家を出た。

そして車のエンジンをかけ、あてもなく切ない音楽をかけながら車を走らせる。

そして気づけば、県を2つもまたぎ、遥か遠くの所まで来ていた。


 自分の事と海の離婚の事で落ち込み、どこへ行く用事があるわけでもなく、古い店が建ち並ぶ商店街の近くに車を止め何をするでもなく、フラフラと歩く。

すると、ある一つの喫茶店に目が止まった。


 ”この喫茶店どっかで見た事ある気がするな...いやでも、こんな所来た事ないよな...夢か?”


普段俺は夢をよく見るし、覚えている。夢の世界の中だけにしかない、自分だけの街もあるぐらいだ。

その夢で見た風景とどこか似ていて、それが一瞬だけ蘇り、立ち止まってしまった俺。


”喫茶店...あまり行った事ないけど入ってみるか...”


 いつもの普段の気分なら絶対入らないであろう、その喫茶店にお邪魔してみることにした。


 そう...


その扉を開けた事で、俺のこれからの人生が大きく変わった事をまだ分からずにいたのだ。

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