小説からはみ出す歴史の流れ

歴史書の体裁をとった、ある女性の壮絶な半生記。しかし歴史書ということは、過去の出来事としてこれらを後世から淡々と眺める視点があるということで、精神を消耗する政治の場の駆け引きも、戦場の生々しさも、ただただ静かに抑えた表現で記されているところに「歴史」という演出の凄みがある。果たしてその後イルコアはどうなったのか、鉄仮面ザユリアイはどのように生きたのか、新しい権力者の時代は訪れたのかなど、作者様の創造した架空の世界ながら、気になってしまう構成力。架空世界の歴史研究、ちょっとかじってみてもいいかも。

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