本書を読むうえでの留意点

 上で述べた通り、本書は、身内に対する申し送りのための覚書であり、グブリエラ家当主としての指針を後継者に示すことによって、家の繁栄を願った書物である。

 そのため、ザユリアイとオレッサンドラらとの間で周知の事実である事柄の場合、説明や詳細が省かれている。よって、該当の箇所については、読者が困らないように、適宜、注釈をつけた。その際、歴史に詳しくない者や異語人への便宜を考えながら書いたので、歴史に通暁している者は不便を感じるかもしれないが、その意図を汲み取っていただきたい。

 繰り返しになるが、本書は、極めて近しい身内に対して書かれたものであるため、出来事に関して、基本的に、ザユリアイの率直な意見が記されており、彼女が自分自身を取り繕う記述は少ない。

 しかしながら、ザユリアイは史書を記そうとしたわけでもなければ、中立的な史家であろうとしたわけでもなく、あくまでグブリエラ家の当主というくびきの中で本書を書いた。その彼女の価値観は差っ引いて、本書を読み解く必要がある。

 『スラザーラ内乱記』の校注者の辞に書かれている通り、「書かれている理由、書かれていない意図について考えることが肝要」な箇所が存在する。

 とくに、溺愛していたオレッサンドラに関する叙述には注意が必要である。

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