第25話 巣立ち

今朝のラシュール家はとても慌ただしい。




一人娘が嫁ぎ先に引っ越すとなったら、誰でも慌てるだろう。




サヤ「お父様、落ち着いて…私は大丈夫だよ?」




ドアの向こうにいる父に話しかける。




ジャック「そんなの無理だって!いきなりすぎるさ!娘が今すぐ手元から居なくなるなんて信じたくない…」




サヤ「お父様ならいつでも会いに来れるでしょ!?ほら、業務がなんとかって…」




ジャック「そういう問題じゃない!娘が巣立つんだぞ!?」




サヤはため息をつく…




サヤ「受け入れなよ!?小さい頃から決まってたんだからさ!」




ジャック「早すぎるよ…」




サヤ「あーもう!行ってくるからね!」




さっさと行こうとすると…




ジャック「わかったわかった…せめて見送りだけはさせてくれ…!」




遂に部屋から飛び出てきた。




サヤをギュッと抱きしめ…




ジャック「あぁ我が娘よ…行ってらっしゃい…時々様子を見に行くからね?」




サヤ「心配しすぎ…私は大丈夫だよ…ずっとお父様の娘だから…!」




親子水入らずの時を楽しんでいると…




ガランガランッ




玄関のベルが鳴る。




サヤ「じゃあ…行ってくるね…」




ジャック「…ああ…」




父の元を離れ、馬車に乗り込もうとすると…




使用人「サヤお嬢様!行ってらっしゃいませ!」




使用人たちが総出で見送ってくれた。




サヤ「…行ってきます!今までありがとうみんな!」




手を振って皆に挨拶する。




ジャック「気をつけて行ってくるんだぞー!」




涙を流し、いい家族を持ったと実感した。






馬車に揺られ数時間…




御者「城に着きましたよ!サヤ・ラシュール様!」




サヤ「あ、はい!今降ります…」




急ぎ気味に荷物を持って馬車を降り、御者の人にお礼を言う。




サヤ「ここまでありがとうございました!良い一日を!」




言い終わると、サヤは足早に王城へと走った。




御者「王妃様の命令となって驚いたが、行儀のいいお嬢さんだことだ!運が良かった!」




入り口にはレドの母がいて、出迎えてくれた。




母上「よく来てくれました…サヤさん、家族になってくれて嬉しいわ!ふふ…少し気が早いけれど…」




サヤ「お義母様、ありがとうございます!父が中々離してくれなくて…」




話しながら中へ入ると…




レド「サヤ、着いたか!君の部屋を案内するよ…」




サヤ「レド…ありがとう!今行くね!じゃあお義母様、ここまでありがとうございました。また後程お会いしましょう。」




母上「そうですね。夕食の時…かしら?待ってるわ!」




お義母さんに頭を下げてレドの元へと向かう。




遂に、二人の生活が始まる時…




サヤは色々な想いを募らせ、階段を登った。

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