第2話 混乱

悪役令嬢になる決意をしたサヤは…




サヤ「悪役令嬢とはなんたるか…小説を読みましょう…」




悪役令嬢が断罪を受け婚約破棄されて、王太子が運命の相手と駆け落ちするという内容の小説を読み始めた。




サヤ「ふむふむ…こんな感じかしら…?私の婚約者にさわらないでくださいますか?婚約者がいる異性に触れるなどマナー違反です!うーん。うまく言えないですわ…」




十分悪役令嬢だということにサヤは気づかない。




サヤ「いやがらせ…?これはしたくありませんわ…悪役令嬢といえど人を傷つけるのはこちらがマナー違反になりますわねぇ…」




その本を何回も繰り返し読んで発声やセリフの練習をする。




悪役になる練習をしていたら、夜になってしまった。




ジャック「サヤ、食事の時間だよ!降りてきなさい。」




サヤ「はい!お父様!」




早足で階段を降りる…




ジャック「あぁよかった…一日中部屋にこもっていたから何かあったのかと…それに変な声を出していたから…」




サヤ「変じゃありませんわ!立派な悪役になる練習ですの!」




またそのことかとジャックは肩を落とす。




ジャック「王太子殿もサヤのことを気に入られたようだぞ。よかったな…」




サヤ「私で満足するだなんて…なんて誠実なレド様…」




恋する乙女の顔をしているサヤにジャックは言い聞かせる。




ジャック「いいかいサヤ。婚約破棄なんてさせたら私が王家にキレるからね?それに王家の方々もサヤを歓迎してくれている。お茶会は明日だから。」




サヤ「明日…わかりました。練習します…!」




彼女はどうしても悪役令嬢になりたいらしい…




相思相愛だというのに、なぜ気づかないのか…






翌朝…




ジャック「サヤ、王太子様がいらっしゃったよ。出てきなさい。」




部屋の扉を開け…




サヤ「もう来てくださったんですの?着替えは済んでいます!」




サヤは急いで玄関へと向かう。




コンコンッ




ノックの音がする。




ドキドキと鳴る心臓の音を落ち着かせながら玄関のドアを開ける…




王妃「どうも…この前は大丈夫でしたか?サヤさん…ごめんなさいね、こんな急に予定をとってしまって…」




王妃は深々とお辞儀をする。




サヤ「!?そのようなことをされる身分ではございません!顔をあげてください!」




王妃「いいのよ。家族になるんだもの!レド、挨拶はどうやるんだったかしら?」




少し恥ずかしそうにレドが顔を出す。




サヤの心臓が高鳴り、ドクンドクンと脈打つ。




レド「この前は…大丈夫でしたか?」




サヤ「は…い!ダイジョブデス…」




あまりにも緊張して片言になってしまう。




するとレドはサヤの手をとり…




レド「改めて…僕と婚約してくださることを喜ばしく思います。その瞳も…雪のように白い肌も…僕はすべてを愛します。」




手にそっとキスをする。




サヤの顔はもう真っ赤で、何が起こっているのかわからない状態である。




王妃「いい挨拶よレド。じゃあ、一緒に花壇を歩いてきたらどうかしら?とっても綺麗だから。私たちは他のお話しているから。」




レド「サヤさん、僕と行ってくれませんか?」




サヤ「レド様…もちろんでゴザイ…マス…」




二人は花壇のそばを一緒に歩くことにした。




レド「サヤさんの家の花壇、とても綺麗です…王宮ではあまり外に出られないので…」




サヤ「そうなんですね…あの…レド様…お話がありまして…」




レド「なんでしょうか?」




サヤ「私はレド様に幸せになってほしいのです…私では幸せにできる自信がありません…なので私は悪役令嬢になります!」




レド「……はい?」




思わず聞き返してしまった。




サヤ「その…私はレド様のこと…心からお慕いしておりますが…レド様は違うと思うので…いつか運命の人と出会ったら婚約破棄してください。」




いざ言葉にすると、サヤは少し涙ぐんでしまった。




好きな人に幸せになってほしいといえど、自分にとっても愛している相手だ。無理もない。




レド「その…勘違いなされてると思います!僕は本当にサヤさんを慕っております。だから…二人きりのときは砕けて話しませんか?」




サヤ「うぅ…いいのですか?」




レド「はい、僕のことはレドとお呼びください。」




サヤ「では…レド…さん。」




レド「レドとお呼びください。サヤ…?」




ドキッ




心がレドに傾く。このままレドと一緒にいてもいいのでは?と。




サヤ「駄目なんです!私じゃ幸せにできません!」




そう言うと、サヤはその場を離れてしまった。




レド「あぁ…やってしまった…馴れ馴れしくしすぎたかな…はぁ…本当に駄目なやつだな…」




壮大なすれ違いが起きている。




お互いが鈍感すぎるのだ。




その後、お茶を飲む機会があったがサヤは断り、部屋にこもった。

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