青紙 AOKAMI

konnybee!

第1章 Un naufragé 漂流者

第1話 DECOUPER デコパージュ


 蒸し暑い…。


 あまりの暑さに目を覚ました。

 額だけではなく、顔中、身体中から汗が吹き出しているようだ。

 そんな状況の中で僕は目を覚ました。


 そして、起き上がり辺りを見渡す。


 驚いたことに、僕は草原で寝そべっていたようだ。辺り一面、草原が広がっている。

 ここは一体どこだ?


 この草原は地平線の彼方まで広がっているように見える。 所々には白や黄色の花も咲いている。


 「ヤバ…。 ここ、どこだろ…。」


 そんな中、水の流れる音が聞こえた。

 暑い…。

 僕は立ち上がり、耳を澄ます。


 どうやら水の流れる音、いわゆる川の流れる音は僕の後方から聞こえるようだ。

 飲めなくてもいい、今はガチで身体を冷やしたい。


 僕はその一心のまま、音のする方へ向かった。 と言っても歩きだが。


 およそ100m位歩いただろうか。 その先には草原を横切るように、流れの早い川が流れている。 川幅はおおよそ、20m位だ。


 「これ、飲めるかな…。」


 ピコン!

「成分分析。 完了。 ナトリウム・カルシウム・マグネシウム・カリウム・ケイ素が主成分の為、飲用可能です。」


「誰!?」

 電子音の後に聞こえた説明文に僕は驚いた。

 だが、僕の問いかけに返事はない。


「ま、まぁ喉がカラカラだから飲んじゃおうかな?」

 両手で川の水を掬い、その水を飲んでみる。


「何だか、冷たくもなく普通の水だな。まるで水道水みたいだ。 コップがあれば飲みやすいのに…。」


 ピコン!

「ストレージに木製のカップ。 ならびに、木製のソーサー、トレー、カトラリーも揃えてあります。 使用方法はストレージオープンです。」


「だから誰っ!?」


 相変わらずのダンマリかーい!?


「とりあえず、ストレージオープン?」


 音もなく目の前に現れる、細かく仕切られた、いわゆる詳細な画面。

 上部の余白には

『ストレージ 58 / 20,000』

 と明記されている。

 

 最初の仕切りはWeaponとなっていて、その欄の最初はプラチナソードとなっている。

 次にDEF 、レザーパット。 これはワンセットと表記されている。


「Weaponって武器ってことかな? プラチナソードだから武器ってことだよな。 てか、武器が必要なのかーい!」


 僕はその表を触ってみた。

 触れているのかいないのか、わからない手触り。

 僕が触れたその表は微妙に動く。


「もしかしたら、スクロールするのかな?」


 ピコン!

「します。」

「ヘェ…。」


 ピコン、っとなる音と、誰ともわからない声が気にならなくなってきた。


 とりあえず、スクロールをしてみる。

 最後の表記はdaily necessitiesとなっていた。

 いわゆる生活雑貨ってやつだな?


「何が出るかなぁ〜♩」

 某テレビ番組のように、歌いながら表をスクロールする僕。


「スゲーな!」

 生活雑貨の欄には、すぐに生活できるように、家具や家電が表記されている。

 僕は試しに扇風機を出してみた。


 品物の取り出しは思った通り、そのアイコンをタップすれば取り出しができる。

 

「やっぱり夏は扇風機っすな。」

 僕はコンセントを持ち思い出す。


「ここ、屋外だから!」


 誰もいない草原で1人、ボケツッコミをしてしまった。


 ピコン!

「この世界での家電は、すべて魔力によって作動します。この地に魔道脈はありません。街や村に行った際にご使用下さい。 ちなみに道具の使用後はストレージへ。 と言えばストレージに戻ります。」


「なるほどなるほど。 ご丁寧にありがとございます。ストレージへ!」


 ストレージへ! っというと同時に消える扇風機。

「スゲーなオイ!」


 そんなことよりも、武器が気になるんだけど…。あと魔道脈って、何だかファンタジーだな…。


「ところで、僕は何者だ? 名前もわからんぞ? 何でここにいるんだろう…。」


 ピコン!

「ステータス オープンと言えば、自分の状態を表示することができます。 ちなみにストレージとステータスは本人以外に認識することはできません。 ステータスとストレージの表示を消すときは左右どちらかにスライドをすれば消えます。」


「こりゃまたご丁寧にありがとうございます! ピコンさん、がいてくれて助かりますよ!」


 ピコン!

「名付けをされた為、会話が可能になりました。マスターありがとうございます。 ピコンです。 これから宜しくお願い致します。」


「安易ーー!! いやいやいや! ピコンはないでしょ!」


 ピコン!

「名前の変更でしょうか? 変更には金貨50枚が必要です。」

「金とるんかーい!」

「人が動くと、お金も動くのは世の常です。」


 言い返せないっす…。


 とりあえず気を取り直して、ステータスを見てみますか。


「ステータスオープン!」

 言うと同時に広がる画面。 そして真っ先に目に入った種族名。


天空人てんくうびと族って…。 人間辞めてるんかーい!」


 ピコン!

「こんにちはマスター、ピコンです。」

「ハイ。知ってます。」

 ところでピコンさんの声はどこから聞こえるんだろ…。

「ご説明を致します。」

「ハイ。 お願い致します。」

「種族名、天空人とは天空に住む者たちです。」

「でしょうね…。」

「まず、この世界には多くの種族が存在致します。 人族、エルフ族、獣人族、ドワーフ族、海棲人かいせいびと族。 そして神族しんぞくと魔族がいます。 これらの頂点に立つのは神族と魔族です。 マスターの天空人族は神族の次の種族になります。 地上では敵なしです。 すごいですね?」

「は? 僕、すごいんかーい。」

「どうしましたマスター? 力のないツッコミですね?」


 そりゃ驚いてツッコミもヘタるわ…。


「そして次です。 ヒットポイント、HPと表記されている部分です。 通常は数字ですが、マスターは ?&?#?@??#?? となっていますので、クッソ無限と思ってください。 MPも同じです。 クッソ無限です。」

「クッソって…。」

「ちなみに、マスターのこれらのステータスもすべて文字化けしております。 なのでマスターはクッソ強いですよ。

 STR / Strength ?????

 ATK / Attack ?????

 VIT / Vitality ?????

 DEF / Defense ?????

 INT / Intelligence ?????

 RES / Resist (無敵だけど♀に対しては)

 DEX / Dexterity ?????

 AGI / Agility ?????

 LUK / Luck ?????

 Lv / Level ?????

 EXP / Experience ?????



「ピコンさんや? レジストに何やら不穏な文字がありますが?」

「マスターは好色男児こうしょくだんじなわけですね?」

「そりゃ男ですから、って違くて! そこ弱いんかーい!」

「はい、弱いです。」


「ところでピコンさんや?」

「質問でしょうか? マスター。」

「スキルに 居合 と 真空斬、があるけど、これはプラチナソードと関係があるのですかえ?」

「それらはマスターの前世の記憶がそうしていると思われます。」

「前世?」

「はい。 ステータスに表記されたName : Tubaki Aokami と言う名はこの世界では聞いたことのない響きです。」


 ツバキ アオカミ。

 青紙あおかみ 椿つばき…。

 そうだ…。

 僕の名前だ!


 僕は鍛治師と居合術の家系。 青紙家の三男の椿だ。

 僕はストレージを開き、プラチナソードを取り出した。


 日本刀?

 

 綺麗に編まれたつかから柄頭つかがしら


「これって日本刀?」

「すみませんマスター。 ワタシの知識不足のため、その名はわかりません。」

「いや、別に構わないよ。」


 僕はプラチナソードを抜刀し構える。

 軽く素振りをし、プラチナソードを鞘に納めた。


 そして、鞘に納めたまま再び構える。


 目を閉じ、風の音を聞く。


 時折、流れる少し強い風。


 来る…。


居合真空斬いあいしんくうざん!」


 居合により、強い風を斬る。


 目の前の川をも切り裂き、川は三又となった。


「ヤバ! 勝手に支流を作っちゃった! てか、威力アリアリだろ!」


 川の水は新しくできた支流へと流れて行く。


 幅約10m位だろうか?

 僕はその川の終わりを見つけに追いかけた。


 ピコン!

「おやおや。 突然、走り出して。 マスターはですね。」

 

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