第2話 情報収集


翌朝。

琥珀はレモンと共に、詳しい情報を集めた。

最重要事項は、巫女の護衛だ。


何人かの候補の中で、琥珀の眼を引いたのは、神宮じんぐう れんだ。

街の人の話では、大きな蜂蜜色の瞳、長い墨色の髪、雪色の肌。

小柄で可愛らしく、瞳の色が特に、美しいらしい。まるで、金貨だと。


「この蓮ちゃんに、会いたいのよね。まずは、母親から落とすべき?」


どうも蓮は孤児らしく、育て親のさくが、義理の母親だ。

昨にも、やんごとなき事情が、ありそうだが、それはまた、別の話だ。


「うーん。昨さんか。実はこの街に来た時、道案内してくれたんだ。流れで、蓮の事を聞いて、仲良くなったんだよね。だから、問題ないと思うよ」


宿の一室。

けろっとした顔で、言ってのけるレモンは、社交性にすぐれている。

人の懐に入り込むのが、とてつもなく、上手うまい。


一方の琥珀は、初対面の相手には、緊張しがちで、小心者だった。

口で大口叩いても、琥珀の内面は、とても、繊細である。


「レモンは良いな。その世渡り上手さ、分けてほしいよ」


「落ち込む必要は無いよ。オレが優先するのは、琥珀。あとは、どうでも良いもん。適当に、周りに合わせているだけさ」


大変、爽やかに、笑って見せたレモンは、かなり、したたかだった。


しばし、沈黙したあと、琥珀が、気を取り直した。


琥珀とレモンは、違う側面を、持ち合わせているから、子供の時から、仲が良いのだ。

場の切り替え方も、琥珀は、心得ている。


「此花街の朱桜しゅざくら祭りが、近いよね。ふむ。王族が行う、本家のものと、少し似てるね」


「一応。王族の許可は、おりているよ。特に今年は、琥珀がいるからな」


琥珀の主は、王の系譜けいふつらなる高貴なる御方。加えて琥珀は、かの者のお気に入りだ。


あからさまに、琥珀が、嫌な顔をした。


「おぇ。私は主の玩具おもちゃでは無いし。良い迷惑だわ」


レモンの言い方は、要するに、琥珀も、朱桜祭りの参加を、意味していた。

無論、舞い手として。


琥珀に、拒否権は無い。


考え様によっては、蓮の近くに行ける、好機だ。










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