第二十九話 玉入れと組体操
午前十一時十分(玉入れ)
玉入れも五年生と六年生が同時に行う。場所は、綱引きと同じ校庭の西側が六年生になる。二組の位置は、クラス席の目の前だ。
各クラス、障害物リレーと選抜リレーの選手十六名だけが残って応援している。
選手は、カゴを丸く囲む白線に沿って位置についた。
パンッ!
開始の合図で玉を拾って投げ始める。
ぼくは、玉を一度に五、六個拾い、ひとつにまとめてバスケットのシュートのように投げ放った。カゴに入ったかどうかはわからないが、また、五、六個拾ってはシュートする。
力がある人は、ぼくと同じようにシュートしている。名付けて「数投げりゃ入るシュート投げ」だ。力がなく届かない人は、下投げで狙っている。
残念なことに、玉入れの選手にバスケ部員は少ないが、秘密の作戦会議のあと、飛沢さんと西川さんのバスケ部コンビに教えてもらいながら特訓してきた。みるみる玉がたまっていく。
玉を拾いながら他のクラスの様子を見ると、少しは入っているようだが、二組のほうが明らかに多い。
足下の玉が少なくなってきたので、一個拾っては下投げで狙うことにした。
パンッ!
終了の合図がなった。
支えていた先生が竹ざおを倒して、カゴに入った玉を数え始める。「ひとつ、ふたつ、みっつ……」
カゴから玉をひとつずつ取り出し、数に合わせて投げていく。
「二十、二十一、二十二……」
数え方がゆっくりになってきた。
「二十五……」
三組の最後の玉が高く投げられた。
「三十一……」
一組の玉が高く投げられる。
「三十二、三十三……」
五年生は、三組が三十三個で一位になった。
「三十八……」
四組の玉が高く投げられる。
「四十五、四十六!」
二組の玉が思い切り高く投げられた。
目標にしていた五十個には届かなかったが、一位になれば十分だ。
午前十一時四十五分(組体操)
組体操は、得点に関係ないからやる気が出ない。
そう思っているのは、ぼくだけのようで、クラスの男子は気合が入りまくっている様子で「よしっ」と気合を入れる声が聞こえる。
「高学年による組体操です。練習を重ねた全員がひとつになって作品を完成させます。さあ、ご覧ください」
五年生と六年生が、入場門から自分の位置に全力で走っていく。笛の合図とともに組体操が始まった。組み上がる度に低学年、中学年、そして保護者から大きな拍手が起きる。
ぼくは、たんたんと自分の位置で自分の形を作っていった。
拍手の中、放送係の技の紹介が聞こえてくる。
「次は、女子の『クレーン』、男子の『ピラミッド』です」
男子が崩されそうな組み合わせだなと思った。
次が、最後だ。
「全員で作る大小さまざまな『つり橋』をご覧ください」
そうか、自分が手押し車の形になって作っていたのは「つり橋」だったのだ。
運動会最後のモヤモヤが解消した。
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