第4話 初めての接客と先輩魔女

「初々しいじゃねえか、頑張れよ」


 客はそう言ってにこっと笑うと、コーヒーとサンドイッチのセットを注文した。私は指を震わせながら伝票に注文を書き、厨房にいるマリーの元に届けた。


「コーヒーとサンドイッチのセットで…!」

「はーい!」


 マリーがササッとメニューを作り上げ、最後の仕上げに魔術をかける。体力気力が回復する魔術だ。


「じゃあもってって!」

「はい!」


 先ほど注文した客の元へ慎重に運ぶ。足ががくがく震えているのが分かるが、我慢しなければ。


「お待たせしました。コーヒーとサンドイッチのセットに、なります…」

「ははっ緊張してる?」


 やっぱりお見通しのようだった。ここはもう正直に打ち明けるしかないか。と思ったので、はい。と首を縦に振った。


「そりゃそうだよねえ、でもこっからだよ」

「え…」

「こっから慣れて行けばいいんだ。頑張ってね」

「は…はい!」


 すると、マリーが厨房から出て来た。どうも、ありがとうございます。と言いながらこちらへと近づいて来る。


「この方、イーロンさんて言ってね。ここの常連の方なの」

「そうなんですか?」

「ははっマリーさんのおっしゃる通りだよ。僕は長年冥界廊の調査をしていてね。よくこちらへ通っているんだ」


 イーロン曰く、冥界廊はまだまだ調査が行き届いていないらしく、未発見の遺跡や遺物、怪物などがいるとの事だった。


「だから明日以降も通わせて頂くから。どうぞよろしくね」

「はっはいっ…!」


 私はお辞儀をして、レジの近くに移動した。イーロンはコーヒーを一嗅ぎすると一口二口と飲み、ハムとたまご、ツナとレタスのサンドイッチを頬張っていった。


「真夜、頑張ったじゃん」


 マリーに励まされ、思わず嬉しくなって笑みがこぼれた。すると扉ががらっと開く。現れたのはぼさぼさ髪の女性だ。身長は…私(150センチ)と同じくらいだろうか。


「マリー、遅くなってごめーん!」

「ユナ!また遅刻?!」

「や、冥界廊へ行く探検家が倒れてたから看病してた。マジマジ」


 なんかちゃらんぽらんな態度をした人に見える。ユナと言ったか、この人も魔女なのだろうか。


「あっユナ!新人さん!真夜って言う子!」


 マリーが私を指さしながらユナへ声をかけたので、私は慌ててユナへよろしくお願いします!と頭を下げる。


「あっはいはーい、真夜ちゃんね。あたしユナ。よろしくー」


 ユナはそう言い残して奥の部屋へと風のように消えていった。


「真夜、ユナも魔女でここの食堂で働いてる子になるの。適当な感じだけど悪い子ではないから安心して」

「あっはい」

「聞けば色々教えてくれると思うわ」


 だがあんな適当&ちゃらんぽらんな人のアドバイスって、あんまりためにならないような気もするのだが…。

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